拍手 135 二百三十二「結果報告」の辺り
為す術なく、呪い師達を見送ったシセアドは、急ぎ領主の元へと向かった。
「失礼します」
「シセアドか。どうだった?」
「それが……」
シセアドは、先程裏庭であったばかりの出来事を、過不足なく己が主に伝える。聞き終えた主は、豪快に笑った。
「そうか、断ってきたか」
「はい……申し訳ございません」
「よいよい。あの者達は、まだ領内にいるのだろう?」
「はい。街の外にいる、と」
「ふむ……」
領主が顎に手をやるのは、考え事をする時の癖だ。その様子を眺めながら、シセアドは続く命令を待った。
「二日待つ、と言っていたのだな?」
「はい」
「向こうの要求した褒美は、出せるはずだな?」
「はい。宝物庫には、いくつか金塊がございますから、問題ございません。殿、もしや、そのまま褒美を渡して見逃すのですか?」
「まさか」
領主は再び笑った。今度は先程のような快活なものではなく、暗く猛々しい。
「褒美を取らせるのと引き換えに、領内に留めおけ」
「は」
「抵抗するようなら、致し方あるまい。あれを使うように」
「……よろしいのですか?」
「少々呪い師の使い勝手が悪くなるだろうが、ないよりはいい。隣の領では、多くの呪い師を雇い入れたと言うぞ」
「それは……」
「我が領でも備えておかなければ。いざ戦となった時に、犠牲になるのは領民だ」
「心得ております」
「では、頼んだぞ」
「はい」
領内でも、ごくわずかしかその存在を知らない、不思議な呪い道具。人の心を操れるというそれは、領主の血筋に代々受け継がれてきたのだとか。
いつ、誰が、どこでその道具を時の領主に渡したのか。記録は一切残っていない。
だが、この道具を使われると、意思というものをなくし、使ったものの意のままに動くようになるという。
これが使われるのは、これまで重罪を犯したものだけだった。道具で意思を奪い、強制労働をさせるのが、領内でもっとも思い罰とされている。
あれを、旅の者に使う羽目になるとは。だが、これも全て領の為、領主の為だ。シセアドはそう心に決め、城の中を進んでいった。
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