拍手 117 二百十四「新女王の動き」の辺り

 最初に地下都市を見た者達は、皆一様に同じ感想を持つ。

「これが……大地の下……?」

 驚くエルフ達を見て、そうだろうそうだろうと頷くのは、自身もエルフのフローネルだ。彼女も、初めて地下都市を見た時には驚いたものだった。その感動を覚えているからか、他の同胞達の驚きに納得している。

「信じられないのはわかるが、ここは本当に地下にある街なんだ」

「こんな場所……地上でも見た事がないわ……」

 そう呟くのは、グサンナード王国の亜人市から救出したエルフだ。今回救出したエルフも皆、女性ばかりである。

 捕まるのが圧倒的に女性が多いからという理由もあるけれど、どうも男性は捕まってすぐどこかに送られるらしい。

 今地下都市を見て驚いている彼女も、一緒に捕まった同じ里の顔見知りの男性が、捕まった次の日にはどこかに連れ去られたようだと言っている。

 どこに連れて行かれたのかは、誰にもわからない。生きてさえいてくれれば、どこへででも助けにいくのだが。


 現在、救出したエルフや獣人達は一度十二番都市へ連れてくる事になっている。ここで健康状態などをチェックした後、治療が必要な人は病院へ入れ、問題ない場合は新しい里へ送っているのだ。

 だが、ここで一つ、困った事が起こった。

「私、ここに残れないかしら……?」

「へ?」

 グサンナードの亜人市で助けたエルフの一人テパレナがそんな事を言い出したのだ。

「いやあ、さすがにそれは……」

「ダメかな!? 私、ちゃんと働くよ!?」

「いやあ……」

 フローネルは答えられない。都市に関して、全ての権限を持っているのはティザーベルだ。フローネルと妹ハリザニールの恩人にして、フローネルが住んでいた里の恩人でもある。

 そんな彼女に、大それた「お願い」をするのは、さすがに気が引けた。

 とはいえ、テパレナも真剣そのものだ。これは、簡単には引きそうにない。

「嬢ちゃんに聞いてみちゃどうだ?」

 一緒にグサンナードへ行ってくれたレモの言葉もあり、結局ティザーベルまで話を持って行く事になった。


「え? 七番都市に?」

『はい。現在、シーリザニア関連の全てがあちらにありますので、そのままとどまっているものと思われます』

 宿泊施設のカウンターに座る、不思議な人形からそう言われ、思わずレモと顔を見合わせる。

「我々だけで、七番都市まで行けるのだろうか?」

「一応、嬢ちゃんにもらったこれでここまでは帰れたんだから、七番都市にも行けるんじゃねえか?」

 そう言ってレモが己の左腕を差し出す。そこには、鈍く光る銀色の簡素な腕輪がはまっていた。

「では、七番都市に行って聞いてみよう」

 グサンナードから救出したエルフ達は、十二番都市に預けたまま、二人は七番都市へと移動した。

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