拍手 067 百六十四話 「モグドント」の辺り

 なんとも素朴な「街」もあったものだ。

 ――いや、待てよ?

 前世のテレビで見た、戦国時代の街もこんな感じではなかったか。いや、あれは城だったかもしれない。

 通りを行く人々を見てると、割と露出が多めだ。地域的に雨が多く高温多湿、冬でも平均気温が高めだという。この辺りの情報はティーサからもらった。

 六千年前と比べると、気候変動はあるだろうけれど、そこまで大きなものではないようだ。化石燃料で二酸化炭素を出しまくった地球世界とは違うのだろう。

 とはいえ、やはり何の変化もなかった訳ではないらしい。

『あら、あの大岩がなくなったのね』

『姉様、岩なんてあったの?』

『ええ、あの山の裾に。山も形が変わってしまって……』

『そうなのねー』

『五番都市の方はどうなの?』

『うーん、元々五番都市は人の少ない場所に作られたからってのもあるけれど、そこまで劇的な変化はないかなあ』

『……調べていないから、という事はないわね?』

『ぎく!』

『主様の為にも、きちんと現在の都市周辺を調べておきなさい』

『はーい』

 支援型の力関係はわかりやすい。ただ、そういったやり取りは、人の脳内でやらないで欲しいのだが。

 街中にいる時は、同化しておいた方がいいというティーサの提案からこうなったけれど、いっその事服の下にもで隠しておいた方が良かったか。

 それと、パスティカが帝国周辺を調べるのには反対だ。大雑把な彼女の事、何かやらかす可能性の方が高い。

 帝国に関してはティザーベルが住んでいる場所だから、詳細な情報は必要ない。入り用な時は、ギルドでも何でも調べる手があるのだから。

『ちょっと、大雑把って何よ大雑把って!』

『確かにこの妹は抜けているところがありますけれど、調査は大事ですよ、主様』

『姉様酷い!』

『本当の事を言ったまでです』

 だから、脳内で言い合うなと言うのに。ティザーベルは支援型達の言い合いにうんざりしつつ、狭い街中を歩いた。

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