拍手 045 百四十一話 「里へ」の辺り

 道を歩く。でこぼことした、歩きにくい道だ。何より、ここしばらく街中の移動はまだしも、都市間の移動は馬車か船が主だった。

「いけねえ。いつの間にか、足がなまってやがったか……」

 己の体の鈍さに、レモは毒づく。本当なら、目覚めたその場で待っていた方がいいんだろうが、あんな人里離れた場所には、そう長くいられるものでなない。

 ヤードとティザーベルが生きている事は、疑いようがない。何せ自分だって、怪我一つなくいるのだ。自分より若いヤードや、生き残る術を多数持っているティザーベルが死ぬはずがない。

 当面の目的は二人との合流だが、どちらかが探してくれるのを待った方が効率がいいだろう。

 お互いがお互いを探してすれ違うのが、一番怖い。

「待つってえのも、案外厳しいもんだが、しょうがねえ」

 これまでの経験で、少しは精神も鍛えてきたと自負している。何より、見知らぬ場所で自分を探し出せるとしたら、おそらくティザーベルだけだろう。

 ヤードも同じ考えで、今いる場所でおとなしくしている事を祈る。あれは時折こちらの考えも及ばない行動をする時があるが、概ね基本通りに行動する奴だ。

「……頼むぜ、嬢ちゃん」

 娘くらい年の離れた相手に対して言う言葉ではないだろうが、今は構っていられない。

 レモは晴れ渡る空を見上げて、また一歩足を踏み出した。

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