拍手 043 百三十九話 「一網打尽」の辺り
日が暮れるを眺めながら、レモは一つ溜息を吐いた。
「いつになるかねえ……」
大森林の地下遺跡にいたはずなのに、気付ば見知らぬ森にいた。周囲にはすり鉢状のでかい穴が空いているし、そこから出るのもまた一苦労だった。
体に怪我はない。装備もそのままだ。やばい魔物でも出る森ならまだしも、普通の森で獣に遭遇するくらいなら何とかなる。
そう思って、魔物が出ない事を祈りつつ森を歩く。いつもの癖で、装備の中に非常食もいくつか仕込んでおいた。ティザーベルと一緒に活動するようになってから、必要なくなって久しいが。
さすがにあの大森林を一人で歩こうとは思わない。だが、簡単に探ったところ、この森には大森林のような魔物は潜んでいないようだ。
慎重に進む。方向を見失えば、遭難するのは確実なのだ。
「ん? お、道があった」
一人だからか、つい独り言を口にしている。道は、獣道のようなものではなく、確実に人の手が入ったものだ。
これがあるという事は、少なくともこの道を作った人がいるという事だ。運が良ければ、村なり街なりにたどり着ける。
「さて、日が暮れるまでに何とかなりゃいいが」
どちらに向かうか、勘でしか決められない。なんとなく、日が落ちるのとは反対に行こうと思った。
これから日が落ちる西よりも、明日になれば日が昇る東の方がいい。レモは一度空を見上げてから、伸びる道を歩き始めた。
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