夏には夏の良さがある(夏、白昼夢、少女)

本日のお題は「カレンダー」、ぬるい作品を創作しましょう。補助要素は「昼」です。



 『夏には夏の良さがある』


 夏が暑いのは当たり前だとはわかっている。

 けれど、こう暑いと頭もぼんやりして働かない。

 美奈は、昼食も食べる気になれず家の中で一番涼しいと思われる廊下にぺたりと熔けるように寝そべる。

 生ぬるい風ではあるが、汗ばんだ肌を通り過ぎると少しだけ涼しさを感じた。

 蝉の鳴き声は、子守唄には少々うるさく眠るに眠れない。

 うつらうつらしながら、壁にかかるカレンダーを床から見上げた。

 風に吹かれるカレンダーはまだ残り5枚ある。

 ――― 5枚めくったら冬だな。

 美奈は、カレンダーが一枚になった時を想像してみる。


  *


 はぁと、白い息で手をこすりながらぺりぺりとカレンダーをめくると心もとないような、大切なような12月と書かれたカレンダーが一枚残る。

 いってきますと外に出ると、すーっと紙でも切れそうなほどの冷たい空気が肌を刺す。

 歯をカチカチならしながら、冬の味を噛みしめる。

「寒いと思ったら、雪だぁ」

 鈍色の空からふんわりと白い綿のような雪が舞い落ちる。

 街を真っ白に染め、いつもとは違う世界をくれる雪が美奈は大好きだ。



「かき氷食べたい……」

 雪を思い出し、いっとき涼しい気持ちになったが白昼夢。

 コンビニに買いに行くのもおっくうだ。

 すると天の声が聞こえた。

「みーなー、かき氷買ってきたよ。イチゴとレモンとどっちがいいー?」

 買い物帰りの母が呼ぶと、美奈は跳ね起きた。

「わーい! レモンちょうだいー!」

 夏には夏の良さがあるかもしれないと、美奈は思いながら小走りにダイニングに向かった。



・END・


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