付箋紙の魔法(オフィスラブ、女先輩)

らんさんの本日のお題は「メモ」、ほっこりした作品を創作しましょう。補助要素は「夜景」です。



「付箋紙の魔法」


 眼下に流れる光の渦を見ながら、守は仕事をやりきった満足感を味わっていた。

 オフィスがある20階の喫煙所から独り占めする夜景は色とりどりの光が納まる宝石箱。残業のご褒美の様に思える。

 山奥の田舎から上京し一年あまり。やっと一人前に仕事がこなせるようになってきた。

 仕事ができるようなってくるのと、この街が好きになってきたのは比例していた。

 働き始めたとき、このごみごみした街が嫌いだった。

 空気も水も不味い。見上げる空は蜘蛛の巣のように電線が張り巡らされ、息苦しさしか感じなかった。

 見ること聞くことが初めての仕事は、要領が悪いのかなかなかこなせず叱られてばかり。

 逃げ帰ろうかと本気で思ったこともある。

 ただ、そうしなかったのは少しの意地と守のことを認めてくれる先輩がいてくれたおかげだ。

 三つ年上の七緒先輩は美人で仕事ができて気配り上手と非の打ちどころがない。

 自分があと3年経ったら、ああなれるか自信はない。

 でも、追いつきたい。そして、もっと認めてほしいと今回の仕事はいつも以上に力をいれ頑張った。

 プレセンは成功し、企画が採用となった。

「これから忙しくなるな……」

 煙を燻らせながら、手の中のピンクの付箋紙を見つめる。


――― 今日のプレセンよかったよ!

    みんなで採用のお祝いするから。

    時間あけておくように^_^ 七緒


「みんなで……ってところが気にはなるけど、まだまだこれからだもんな」

 七緒のメモを大切に胸ポケットにしまうと、自然と笑みがこぼれた。

「よっし、もうひと頑張りするか!」

 守は、大きく伸びをすると喫煙所を後にした。


・END・

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