迷ったときは光合成(作家、悩み、姉妹)

らんさんの本日のお題は「欲しいもの」、パワフルな作品を創作しましょう。補助要素は「日なた」です。


* * *


『迷ったときは光合成』


「うがー! もうヤダ! もう書けない!! 締め切りなんてくそっくらえだ!」

 透子はパソコンの前で、両手を上にあげお手上げポーズをとった。

 締切といっても、投稿先の賞の締切日のこと。

 別に、書きあがらなくても誰も困る人などいない。

 小説家をめざし早5年。箸にも棒にも引っかからない小説をそれだけの期間書き続けているということだった。

「なんか、私のやってることって無駄じゃない……?」

 透子が大きなため息をつきながら、机に突っ伏していると妹の凪子が顔をのぞかせた。

「暴れてると思ったら、また、おねーちゃん悶々としてるの?」

「そうよ。どうせ、私なんか才能ないし、書くだけ無駄なのよぉぉ」

 片手に持ったアイスコーヒーをズズッと飲みながら凪子が冷たく言い放つ。

「うざいなー。書くの楽しくないなら辞めればいいじゃん」

「ひどい……優しくして欲しいのに」

 はいはいと凪子は姉をあしらった。

「おねーちゃん、精神にカビが生えかかってるから日光消毒でもしたら? 天気いいよ?」

「うぐー、一理ある。ちょっとベランダで日干しになってくる」

「いってらー」


 *


 ガラガラと窓を開け、ベランダに出ると雲ひとつない青空が広がっていた。

 インドア派の透子は、思わずまぶしさに目を細めた。

 しばらく日に当たっていると体が暖かくなってくるのを感じた。

(こういうのを光合成っていうのかなぁ……)

 ばかばかしことを考えて、透子はくすっと笑った。

(欲しい欲しいと口を開けて待ってたって夢は空から降ってくるもんじゃない。

 今できることを精いっぱいやるしかないか!)

 透子は大きく伸びをして立ち上がった。

「凪子~、もうひと頑張りするから私にもアイスコーヒーちょうだい!」


・END・

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