男の花園(オフィス、BL風味)

らんさんの本日のお題は「吐息or溜息」、赤裸々な作品を創作しましょう。補助要素は「廊下」です。


 ※注意 BL風味です。


「男の花園」



 会社の長い廊下を真っ直ぐ進み、突き当りにあるのが喫煙室だ。

 まったく、こんな隅の小部屋に追いやられ喫煙者は肩身が狭い。

 しかし、女子の給湯室。男子の喫煙所とはよく言ったもので、歯に衣着せぬ会話ができる場所でもある。

 大輔がラッキーを片手に喫煙室に入ると、先輩の武藤が一人マルボロをふかしていた。

「お邪魔します」

「大輔君。久しぶりですね。忙しいんですか?」

 優しく声をかけてきたのは、メタルフレームの眼鏡が似合うイケメン武藤。彼は若いながらも人事課の主任だ。

 仕事のできる男は、話し方も違うなと新入社員の大輔は感心しながら返事をする。

「そうなんですよ。外回りが多くて、一服してられないんです……」

 大輔は、弱音を吐きながらライターを探し背広のポケットを弄るがなかなか見つからない。

 その様子を、武藤はほほ笑ましそうに見守っている。

「それは大変ですね。でも、一人前に仕事を任されるようになったってことですから進歩ですよ」

「武藤さんにそう言ってもらえると、なんだかやる気がでます!」

 女子社員にも人気がある武藤に認めてもらえるのは、新人の大輔にとって株があがるように思えたからだ。

「ところで、火がないならつけましょうか?」

 武藤の申し出に、大輔は『すみません。お願いします』と頭をかく。

 すると、武藤は大輔のくわえていたタバコに顔を寄せ、自分のタバコの火を移した。

「――― !? 」

 固まる大輔をよそに、武藤は満足そうに吸い終わり、

「じゃ、またね」

 と、部屋を出て行った。

 退室時に大輔がポンと叩かれたのは肩ではなく尻。

 顔面蒼白になりながら、彼は震える手でタバコを吸い直し。

 煙とともに大きくため息をついた。

(し、しばらく禁煙しよう……)



・ E N D ・

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