第四章(4)以洋、懷天に礼を言う
「ん……、あ、あれ……痛たた……」
気が付くと、なぜかいきなり頭が痛い。頭痛そのものは午後からあったが、今感じているのはそれとは違う、どこかに頭をぶつけたような物理的な痛みだ……。
「怪我はないみたいだけど、痛む?」
ぶつけた部分を探るように
「痛くないよ」
「ついさっき、痛いって唸ってたくせに」
「もう痛くなくなったんだって。……いつ帰ってきたの? 僕、また寝ちゃってた?」
そう言いながら
僕、床に寝そべって何する気だったんだ?
頭を掻きながら
「あ、
「うん。君、彼のことを調べたの?」
「午後に図書館でね。……あいつってなんでいつも
訝しい気分で
「先に食事にしないかい? そろそろ空腹で」
「えっ、わかったすぐに用意するね」
頭を摩りながら部屋を飛び出そうとした
「あいつ、
「いや、何も……」
どう答えるべきか迷っている
「あいつ、いったいあなたに何をしたわけ?」
言いたくなさそうに苦い笑みを浮かべていた
「彼は、君が持っている全てのものに嫉妬しているだけだと思うよ。家族や、友達や……その他の全てに」
「だから?」
「俺と一度。やりたいと。それが終わったら消えるそうだ」
やる……? やるって、何を!
真っ赤になった
「あいつ、なんのつもりだよ! これは僕の身体だぞ! なんであいつ、そんなことを気軽に、気軽にっ……」
怒鳴りながら、怒りのあまりそれ以上言葉が出なくなる。
僕だって、僕だってまだ
「そんなに怒らないで、落ち着いて、ほら」
「そ、そそそそそれでっ、それでどう答えたわけ?」
「俺が欲しいのは君だけで、他の誰も欲しくないって」
穏やかにそう答えられ、
顔が、今にも火を噴きそうなくらいに熱い。どう名付けたらいいのかわからない感情で瞬時に胸がいっぱいになる。
今、何と口にするべきなのかわからずに
「あの、ありがとう……ありがとう、
「何のお礼? 俺がこの機に乗じなかったことへの?」
笑いだした
首筋まで完全に赤く染まった状態の
「ありがとう。僕を好きでいてくれて。僕を守ろうとしてくれて」
あまりにも真剣な口調で告げられ、
あたたかいものが胸に湧き上がってくる。誰かを好きになることでここまで心が動くのを感じるのは
上気して熱い
それでも、今はまだその時ではなかった。
今するのは口吻けだけだ。穏やかに優しく
唇が離れた時、
そんな
「明日は……君はやっぱり
溜め息を吐いているかのような
自分はやっぱり
これまで聞いたことのない速さで脈打っている
「わかってる。僕の先輩のところに行こうと思うんだ」
しっかりと
それでも
小さく溜め息を漏らした
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