プロローグ
寒いな。
傍にあるはずのぬくもりに、
足の裏に吹き付けている冷たい風は、それでも止むことはない。手を伸ばしベッドの上を探ってみた
明日、いや、たぶんもう今日になっているはずだ。
両足を縮めながら考える。ベランダに出るリビングの掃き出し窓を寝る前に閉めた記憶は確かにあった。だったらいったいどこから風が……?
ぼんやりと彷徨う意識の中、
帰ってきたら、急いで本を買いに行こうって。年末の期間限定セール七日間の最終日だから、一緒に行こうって。それと、あと、よろしくって……、○○の世話をよろしくって……、誰のだっけ?
カッと目を見開き、
ベッドの半分はやはり空っぽだ。振り向いた
床までの長さのカーテンが、風に吹かれて揺れていた。揺らめく金色のカーテンの向こう、ベランダの柵に腰掛けている人影が見える。
慌てて
「
押し出した声は震えていた。
「
「別に謝らなくていいけどさ」
なるべく明るい笑みをどうにか浮かべ、
「寒冷前線が通過した影響で今日は気温が下がってるんだよ。そんなところに座ってないで、早く中に入りなって」
「先輩に見せるつもりはなかったんですが」
「なら早くそこから下りてくれって。吃驚させないでくれよ、
「僕なら大丈夫ですって、楊先輩」
なだめるような笑みを
「あ~あ、やっぱりまた買い忘れちゃった……」
「なんだって?」
「ほら、あれですよ」
指差された方向を
ふと、いやな予感がして大急ぎで視線を戻す。ベランダの柵の上には誰の姿もなかった。
息を呑んで
どうすればいい?
「
絶叫しながら路上に
辺りは寝静まっている。今し方の
冷たい夜風の中、無人の地面を見つめながら呆然と
自分の頭がどうしたんだろうか? ひょっとして上に戻ったら、そこに
身震いがこみ上げてくる。もう数歩前へと
地面には
その血痕を追いかけてみることにして一ブロック程歩いてみたが、通りまで出ると血痕は途絶えてしまった。
残業帰りらしいサラリーマンが
冷え切った身体を少しでも温めようと、
着ているのはTシャツと、七分丈のパンツだけだし、足にもサンダルをつっかえただけで出てきてしまっている。夜の路上、十二、三度の外気の中に立っている人間の服装としては確かに相当奇妙なはずだ。
春先の事件の記憶が、ふと
どのくらいの間、ぼんやりと立ち尽くしていたのか。寒さに耐えきれなくなって、マンションの正面玄関へと駆け戻る。建物の前に立って、ふと上を見上げた瞬間、今度こそ
つまり、
地面に落ちている少量の血へともう一度目をやった
今できるのはもう、
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