トラック27

 「――ッ、なにするんだよ!」


 裏口から外に連れ出されるや、力任せに放り投げられた。


 「あぁ?」


 そう言うゆらさんの表情は、鬼のように恐ろしく、目を見るも、二秒でそらしてしまう自分が情けない。


 「お前なぁ、いっちょまえなのは格好だけかよ」


 肩を落とし、倒れるオレに、しゃがみ込んで目線を合わせると、


 「ロッカーじゃねえな、お前は」


 そう言って頭をわしゃわしゃと乱雑に撫で回すと振り返り、そのまま会場に戻っていった。


 「んだよ、それ!」


 ゆらさんの姿が消えてから、やり場の無い怒りを壁にぶつけるが、ドンと重い音が響き、手が痛くなるだけだった。


 「あ」


 しばらく外で座り込んでいると、裏口から明らかに顔いろの悪いくっぴーを引き連れて、部長が現れた。


 「部長……」


 なんて声をかけていいのか分からず、口ごもっていると、


 「今日はもう解散にしよう」


 そう言い残して、無気力になったくっぴーの手を引いてゆっくりとした歩幅で駅へと消えていった。


 あんなに落ち込んだくっぴーの姿は初めてで、いつも明るくて空回りしてて、やかましいほど元気なくっぴーが無気力にうなだれていた。


 そんな姿に、また怒りが沸々と込み上げるも、「ロッカーじゃねえな」っていうゆらさんの言葉が頭から離れず、ライブハウスをただジッと睨みつけ、オレは情けなくもトボトボと帰宅した。

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