トラック18

 「フフフ……ヘッヘッヘ」


 テスト前でもないのに、机に張り付き、参考書を広げて、ノートに気に入った文字やフレーズを書き込んでいく。


 歌詞なんて。確かにそんな事を言ったが、実はやってみたいとは昔から思っていた。


 中学時代、捨ててしまったけどマルメロのメンバーに向けたポエムとか詩とかのファンレターを書いていて、最近はラジオで『ポエムとか詩を送られるのはちょっと……』という発言を聞いてから送るのはピタリとヤメてしまったが、まさか、あの時に培った能力がこんな所で発揮されるなんて……。


 帰りに買った『初めての作詞』なる基本事項が載っている参考書を広げ、コーヒーを煽りながら思いつく限りのフレーズをノートに書き溜める。


 参考書に寄れば、とにかく書き溜める必要があるらしい。


 「ふぅ、こんなもんだろ」


 気がつけば、帰ってからゴハンとお風呂を除く時間を掛けて書かれたフレーズはノート一冊に及ぶほどになっていた。およそ、小説でも書くのかと突っ込みたくなる量に、自分がこれだけやったという証にニヤける。


 机の上に置かれた時計は四時四十四分を刺しており、少し不快な気分になるが、そうは言ってられない。これから、作詞していかないと。


 「これは寝れないな……フフ」


 自分にこんなに創作意欲があったとは。


 歌詞を書くことが楽しくて時間を忘れていた自分に驚き、今日は寝ずに学校へ行こうと自分の胸に誓った。

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