トラック4
「たっだいま~」
玄関を開けて、いつもより少しハイテンションで声を掛けるが、まだ親達は仕事なのか、返事が帰って来なかった。
玄関で靴を揃えて脱ぎ、二階にある自室に向かって小走りで向かう。
部屋に入り、鞄をベッドに軽く投げると、ドスンといつもより大きな音が響いた。帰る途中に近くの書店でマルメロのライブ写真集と『はじめてのバンド』なる教則本を購入したせいだろう。
自宅に戻ったら真っ先にする事、それは着替えるでもなく、風呂に入るでもなく、パソコンの電源を入れることだ。そして、起動するまでの間に、ベッドの上に置いてあるマルメロライブTシャツと半パンに着替える。
着替えが終わったら、パソコンの前に座る。これがオレの日常である。
パソコンが立ち上がったら、すぐにマルメロのファンサイトのチェック。
荒らしがいないかを確認し、いたら即刻違反者通告。そして、ファンたちとちょっとした情報交換を行い、別のファンサイトをチェック。そして、楽しみは最後にとっておき、公式ホームページのチェック。情報を全て入手したら最後に自身のブログを更新する。だいたいこれら全てを終えた時には二時間くらい経っている。
全てを終え、時計を見てみると案の定すでに夜の八時を回っていた。普段ならリビングに下りて、ゴハンを食べて風呂に入るが、今日は色々とドタバタしたせいか疲れている。急激な睡魔に襲われ、そのままベッドに入ることにした。
ああ、これでついにマルメロのみんなと同じ部活に入れたんだ。
目尻は垂れ下がり、口角はつり上がりで、もうしっちゃかめっちゃかな表情に違いない。
布団の中で夢が叶った喜びと、明日を楽しみに迎えられる幸せ。今後どうしようかという妄想を膨らませていると、いつの間にか夢の世界へと旅立っていた。
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