第72話 ミレアの妄想、そして…
「何もすることがないというのも、ね…」
いつになれば救援が到達するのかと思いながら、ミレアはただ待たなければいけない現状をぼやかずにはいられなかった。
部屋に備え付けの端末を操作して地上への通信を試みるが、やはりダメもとの字が示すとおり何の反応も示さない。
「…ルクレール君は何を慌てていたのかしら?」
自分と話している最中に血相をかえて部屋を飛び出していった機動歩兵少尉は、いまだ戻ってくる気配がない。行方不明になったわけではないのだろうが、部屋に一人だけで残されているとこの状況下では、自然と不安な方向に気持が傾いてくる。
あともう少し時間が経過して戻ってこなければ探しにいくつもりでいた。
『それにしても…あの二人は絵になるわね』
ジュリエットとラファエルの両名を思い浮かべながら二人の並外れた容貌にミレアは並々ならぬ感心を抱いていた。
この両名レベルの男性に取り囲まれる機会というのはそうあるものではない。二人のうちいずれかが自身の理想にマッチしているのかを内心で吟味するミレアの顔は口元が緩んでいた。
『ラファエルさんは貴族的な美貌で、ルクレール君は美少年タイプ…かな。性格はラファエルさんがクールでルクレール君は少しばかり気が弱そう…でも芯はしっかりしているみたい。ラファエルさんのブロンドヘアーがとても素敵。ルクレール君の綺麗なエメラルドの瞳も捨てがたいのよね。本当…迷ってしまうわよね』
ミレアは異性に対する身勝手な妄想を繰り広げながら端末の内部情報を検索していた。通信こそ無理ではあるが何か役に立つ情報があるのではないかと考えていたからだ。
『でもラファエルさんはクールビューティだけど平然と人を切り捨てそう…ルクレール君は簡単に人を見捨てないか、な。こればかりはちょっとわからないけど』
ほとんどの情報は保護がかけられていてパスワードかDNA識別が必要になっていた。閲覧可能なのは端末自体の仕様説明ぐらいなものだ。
『もし二人が私のことを好きになってくれて、私をめぐって争ってくれるのなら、私はラザフォードの高等弁務官を定年まで続けてもいいわ』
恐ろしく身勝手で都合のいい妄想はとまることがない。だがその意識の半分は現実を認識しており最新のメールが閲覧可能なことをつきとめていた。
『…そろそろ妄想はおしまい。男はリュドミールで懲り懲り。私が求めているのは誠実さなのよ。上辺だけの美しさなんて何の意味もないわ』
ミレアは閲覧可能なメールを表示させた。
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