第31話 王女殿下が望むのは地球との軍事同盟
「ジャファル殿、本題に入りたいのだがよろしいか?」
「王女殿下、それは同盟締結の件でしょうか」
「その通りだ。イリシアは天界人との同盟締結を希望する。我らエルフ族が正当な地位を回復した暁には天界人に相当な土地を割譲しても良い。また我らは天界人に対する感謝と尊敬の印として定期的な貢献をおこなう用意がある。同盟の条件として他に望むものがあれば遠慮なく申し出ていただきたい」
王女様の言葉を聞くジャファルはまるで中世時代の地球にタイムスリップしたような気分にさせられた。
「王女殿下、御国とはいまだ国交が実現していないのですよ。その状態でいきなり同盟というのは…出会ったばかりの者に求婚するのと同じことではないでしょうか。物事には順序というものが御座います」
「問題はないはずだ。お互い条件が一致すれば同盟締結に支障はない」
「現在の地球連合は土地を必要としておりません。惑星開発でいくらでも入手できますから。それに…覇権目的の同盟は我らの議会と市民が納得しないでしょう。両者ともにそこに血を流す正当性が見いだせないからです」
「天界人はこの島の者と同盟を結ぼうとしているではないか」
ミレアに言ったことと同じことをサミーラは口にした。熱意のあまり前菜が運ばれてきたことに気がつかないままであった。
「安全保障条約は純粋に防衛を目的としたものです。プリメシア島が外部からの侵略を受けた場合、地球連合は最小限の武力をもって撃退をおこないます。過剰な軍事力を用いたり、あるいは侵略国を占領するようなことはないのです。また地球の側から宣戦布告をおこなうようなことは禁じてあります」
「それでも構わぬ。天界人がイリシアを防衛してくれれば、我らは守備兵力を残すことなく攻撃に専念できる」
「王女殿下は重要なことをお忘れですよ」給仕の注いだワインを一口飲みジャファルは間をあけた。「地球のテクノロジーは…術とでも表現しましょうか…エルシオンの結界より内側ではまったく作用しないのですよ。同盟を締結したとして我らがテクノロジーを使用できなければ何のための同盟でしょうか」
エルフの両耳がピクリと動いた。
「それは初耳だ…」
「既にご存知のことだと思っていましたが」
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