第21話 王とは誰のこと?

 ノエルが侵入者を取り調べている記録映像を、ミレアはエンドレスモードで眺めていた。


『そなたたちの王に謁見したい』


 ミレアは顔をあげると不動の姿勢で待機している憲兵隊長に眼差しを向けた。常に真剣な高等弁務官であるが、今日のそれはノエルですら思わず一歩退きそうになる気迫が込められていた。


「王というのは誰のことかしら…ね?」


 真摯な眼差しとは正反対にミレアの口調は柔らかかった。


「最高執政官のことではないでしょうか」


 ミレアは記録映像を早送りにすると途中で再生モードにする。


『王が存在しないのならば、ここの統治者に謁見したい』


「では、ここの統治者とは?」


「それは…高等弁務官のことではないでしょうか」


 ミレアは映像に視線を戻すと王女を自称するエルフをいかにすべきか、すでに頭にある解決策の決意を固めた。


「私には外交権限が何もないのにね。王女様には理解できないのかしら、ね。無理もないか…」


 誰ともなく口にする言葉をノエルはただ黙って聞いてるしかなかった。


「いまから拘束中の侵入者に接見します」


「それは危険すぎます。相手は人間ではなく、しかも得体の知れない魔法を使うエルシオン人ですよ」


「取り調べをおこなったあなたに何もなかったのだから、私が接見したからといっても特に問題はないでしょう」そしてミレアは席から立ち上がると自分の決意を口にする。「接見が終了次第、害獣処理の規則に準じて処置をするように」

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