第17話 憲兵隊長自らがエルフの王女様を尋問
「私の名はノエル・ウォン。連合軍憲兵少佐だ。これからラザフォード憲兵隊長として侵入事件の取り調べを開始する」
威勢良く声をだす目前の人物を見ているとサミーラは魔法騎士の姉を思い出さずにはいられなかった。
「おまえの名前は?」
「サミーラ」
「おまえの身分は?」
「イリシア王室第四王女」
すでに同じことを何度も聞かれていたのでサミーラはこの手の質問にウンザリしていた。
「天界人は皆が同じことばかり聞く。この次は『どうやって侵入した』になるのか?」
完全に意識を取り戻したサミーラは少しばかり心の余裕を回復していた。二人の天界人に連行されてきた場所は暗くて陰気な部屋で、清掃は行き届き小綺麗にはなっているものの、実際以上の狭さを感じさせる圧迫感があった。
机と椅子(のようなもの)が存在するだけで、まるで生活感というものがなかった。
背後のドア脇には天界人と、それに得体のしれない等身サイズの人形…サミーラがラザフォードを徘徊しているときに遭遇したのと同じ「モノ」が不動の姿勢で待機している。おそらくは不足の事態(つまりサミーラがよからぬ行動をとった場合)に備えているのだろう。
「そうだ」ノエルは顔色を寸分も変えることなく同意した。「どうやって侵入した?」
「超越の術を使った…もう何度も答えているぞ」
「それはどういうものだ?」
ノエルは理想的なまでに感情を抑制した声で追及する。サミーラはますます近衛将軍の姉を意識せざるえなかった。
「高次世界の扉を開き目的とする場所に跳躍する魔法だ。伝説の世界スターティアラを訪れるにはこの術が必要だといわれている」
「スターティアラ?」
「魔法と機械の融合が実現した世界だ…そなたたち天界人のことではないぞ」
ノエルは一呼吸置いて目前のエルフを黙って眺めた。スターティアラ云々はどうでもいい。問題なのは電磁シールドを突破されたことだ。
「高次世界とはどういったものだ?」
「我々の俗世界よりも上位で、神の世界よりも下位に位置する世界だ。そこを経由すればどこにでも跳躍できる」
「…それは四次元空間のことなのか?」
「ヨジゲンクウカン…?」
エルフの王女は初めて耳にする言葉にキョトンとした表情を浮かべる。ワープ航法原理の一端をちらつかせて答えを引きずりだそうとしたノエルの試みは上手くいかなかった。
「その超越の術は魔法使いならば誰もが使用するものなのか?」
これもまた重要な質問である。
今後エルシオン人が次々とラザフォードに侵入してくる事態は防止しなければいけない。
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