第11話 侵入者の存在を探知した地球人の警備システム

 原則としてラザフォードをとりまく電磁シールドのコントロールは防衛軍司令部の管轄下になる。ただしC検問所(チェックポイント・チャーリー)等のごく一部分に関してはそのコントロールが憲兵隊に委任されていた。


 しかしそれはあくまでもそれは委任であって、防衛軍司令部からでもC検問所のシールドをコントロールするのは物理的に可能なシステムとなっている。


<unknown>


 夜間勤務の当直将校は司令部の中枢AI(人工知能)が表示した文字に首を傾げた。人間を遙かに凌駕するAIコンピューターにして「不明」といわしめるものとは何であろうか。


<unknown、ミケランジェロ公園、ただちに確認せよ>


 AIの人工ボイスが監視ルームに響き渡る。


『よりによって、どうして俺が当直のときに…』


 憲兵隊本部への通信回線を開きつつ、下番時の面倒な報告をもたらしたこの事態に当直将校は心のなかで罵った。






 防衛軍司令部から通報を受けた憲兵隊本部では防犯モニターによるチェックがおこなわれていた。ラザフォードの各所には治安対策を目的とした防犯カメラが設置されており、ミケランジェロ公園の要所にもそれは設置されている。


「…どこにも異常は見あたらないな」


 公園の各所から伝送されてくる映像の山を憲兵はさばいていた。この時間帯の公園に人が存在するのは珍しいかったから、視認による異常の確認は昼間よりも容易におこなえた。


「とりあえずアンドロイドで公園を巡回させるか」


 警備用アンドロイドは定期的にラザフォードの要所を巡回していたが、防衛軍司令部からの通報があったからには改めて現場を確認するしかあるまい。


「おい…」もう一人の憲兵が同僚を肘で軽く小突き、空中に写し出される映像群の一つを指さした。「あれは何だ?」


 そこには童話の世界にでも登場しそうな『夢の世界の生き物』が鮮明に映し出されており、小動物を抱えて歩くその姿は現実の出来事とは思えなかった。


「…こいつは大変だ」


 憲兵の両目が大きく見開かれた。

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