第10話 超越の術はエルフの王女様を何処に導いたのか?
そこはどうやら森のようであった。
子竜を抱きかかえてその場に立ち上がったサミーラはこの森に違和感を感じていた。あまりにも小綺麗すぎるのだ。自然ではなく不自然という言葉がまさに的確というべきか。
「…ここは天界人の街なのか」
超越の術でどこかに移動したのは確かだが、それが天界人の街であるという確証はなかった。ゆっくり歩き出すとすぐに林道に突き当たる。小綺麗な道には等間隔に明かりが存在していたが、その明かりはサミーラがこれまで目にしたことのないものであった。
燭台の蝋燭に見られるような火が存在せず、それでいて蝋燭とは比較にならぬ明るさがあった。機械の世界にはそういうものが存在するというのを耳にしたことがある。
『いったいここは…』
天界人の街に移動するつもりが誤って機械の世界に来たのではないのかという危惧を抱きつつ、明かりから視線を外したサミーラは道沿いに歩を進めた。
歩きながら空を見上げれば雲に覆われた夜空が目に入る。術に挑戦したときにはリーヌ・エルシオンに雨が降っていた。あれからどれだけ時が過ぎたのだろうか。
どこに移動したのかはまだわからない。しかし自分は超越の術そのものには成功した…サミーラはその事実を噛みしめながら己の存在を認める子竜をやんわりと抱きしめた。森の外らしきものが見えるてくると足は自然に早くなってくる。
「あれは…」
一面に広がる広大な芝生、池…そしてさらに遠方にはサミーラが知る言葉ではとても表現できない巨大な建造物群。
エルフの王女は呆然としつつも足は独りでに動き未知なる世界へと踏み出していった。
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