第5話 超能力者は目前に…

「超能力者なんて本当にいるのかしら、ね」


 憲兵隊本部から出たところでミレアはジュリエットに語りかけた。あまり元気がなさそうな相手の様子に、彼女はノエルに絞られたのが原因だと思い込んでいた。


「着任したばかりとはいえ、高等弁務官とは気づかずに失礼いたしました」


 超能力の話題にこれ以上触れたくなかったジュリエットはラザフォードの統治者にこれまでの無礼を詫びて話の方向を反らせた。


「私も少しばかり悪戯の度が過ぎたかな。しかし、これできみは高等弁務官と憲兵隊長の顔を嫌でも覚えたでしょう」


「ええ…」ジュリエットは複雑な気持ちに包まれながら気弱な返事をした。「自分は上官から憲兵隊に文書を配送後、速やかに部隊まで帰投せよとの指示を受けているので、この場から失礼させていただいてよろしいでしょうか」


「ええ、きみの仕事の邪魔をするつもりはないわ」そう言いつつもミレアは相手の顔に視線を走らせながら「きみの名前は?」


「機動歩兵少尉ジュリエット・ルクレールであります」高等弁務官に最敬礼をおこなったジュリエットは「それでは失礼します」と告げ余計なトラブルに巻き込まれないうちに基地へと足を向けた。

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