サマーバケーション 1992年8月9日
暑さで目が覚めた。
エンジンをかけ、クーラーはつけっぱなしだったが、汗だくで不快極まりなかった。
真夏の太陽が高いところにあった。
クーラーをつけてなかったら熱中症で死んでいただろう。
助手席ではテツオが背もたれを倒して寝ていた。後部座席を振り返るとネモケンも横たわって寝息を立てていた。
僕は上体を起こした。
窓のそばを次々と車が通り過ぎていく。
駅からまっすぐのびる大通りに路駐していた。
車を停めたとき、空はまだ薄暗く、車通りもなかった。
マスター=スパイダーからの依頼で土日にライブハウスで演奏するようになった。
昨夜は初日だった。
演奏は上々で客の評判もよく、マスターもご機嫌で酒をおごってくた。
僕たちも気分よく飲んでしたたかに酔った。
明け方まで飲んでライブハウスを後にした。
コインパーキングに停めてあった僕の車(正確には母の車)に3人で乗り込んだ。
エンジンをかけ、パーキングを出た。テツオとネモケンを送っていくつもりだった。しかし、すぐに睡魔に襲われ、仮眠を取ろうと路肩によせた。
ちょっと休もうぜ。
オーケー。
僕とネモケンはまだ夏休みだったしテツオの仕事も今日は休みだった。
僕は運転席のシートを倒した。
テツオが窓を開け、タバコに火をつけた。
まぶたが降りた。
ふぅーっとテツオが煙を吐いた。見たわけではない。聞こえたのだ。
そこで記憶が途切れていた。
時計を読むと10:00を回っていた。
かなりの時間が過ぎたことになる。
大通りに長時間路駐してよく警察に声をかけられなかったもんだ。
運が良かったのか、警察はいつも見当違いの場所を巡回しているのか。
シートを起こし背中に当てた。
ギアをドライブに入れ、2人を起こすことなく走り出した。
この後、理恵に会う約束をしていた。
ランチを食べに行くのだ。
その前に家に帰ってシャワーを浴びなければならない。
さっさとこいつらを厄介払いしなければ…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます