第19話 おっさん初ダンジョンへ行く③
部屋の中から伸びてきた物を剣で弾いてゼリシアさんは部屋の中へ入っていく。
扉が完全に開き、シンが続き、その後に俺が続いて最後にセリアが入る。
入った瞬間、ワイドトレントの大きさに息を飲む。
部屋も広く高かったが、それに負けじと高さ15メートル程の高さ、
いくつもの枝が伸びている。
その何本もの枝を自由に動かす様は、ただの触手を持つ悪魔のように見える。
部屋から伸びてきていたのはワイドトレントの触手だったことが分かる。
先を硬化させて、恐ろしいほどのスピードで刺してきたところをゼリシアさんが見事に弾いていたのだ。
ゼリシアさんは部屋の中でも、ワイドトレントの攻撃を躱しながら、少しずつ削るようにダメージを与える。
それを見て早くもシンが動き出す。
ゼリシアさんと同じように、剣に火の魔法をかけると巧に素早い触手の攻撃を躱しながら攻撃をしていく。
セリアは結界を張り、俺も
「
セリアの出す光線が、幹を傷つける。
畳み掛けるように俺も
セリアも、二発目、三発目と撃ち出す。
それを嫌がったワイドトレントは、シンとゼリシアさんへの攻撃を止めると、いくつかの触手で盾を作り、残りの触手でこちらに伸ばしてくる。
気がついたシンとゼリシアさんが触手を弾くが、逃れた触手がこちらへ向かう。
俺は剣を抜き炎の魔法をかけ、セリアは新たな結界を敷く。
「
セリアの周りに乳白色掛かった半透明なカプセル状のバリアができる。
俺は、自分に向かってくる触手を剣で弾く。重い衝撃が手をわずかに痺れさせる。
セリアへと向かった触手は、バリアによって弾かれる。
当初の予定では、シンとゼリシアさんが触手を掻き回している間に、俺とセリアの火力で削り切る予定だったし、出来るはずだった。
しかし、この便りないダメージとこの鉄壁、拉致があかない。
「
「あんた馬鹿なの?それがあの木に効くかわからない上に月光草まで燃えちゃうでしょ」
確かに。
完全に月光草のこと忘れていた。
その瞬間、弾かれていた三つの触手が束になって鞭のように打ちつけてくる。
シンと、ゼリシアさんはジャンプ一番躱す。
俺とセリアは間に合わない。
「
「きゃっ!」
セリアの聖なる
俺もエアクッションよろしく
「ごっ」
骨が軋む。
そのまま壁に打ちつけられ、激痛が全身に回る。
「がはっ!」
吐いた液体に血が混ざる。
くそっ!
再び上から打ち付けられる触手をなんとか転がって避ける。
が、更にもう一つの触手は躱せない。
ズグァンッ!!
激しい音と共に再び激痛が走る。
あまりの痛さに気を失いそうになる。
全身が痛く、身体が動かない。
俺は死ぬのか?
「大丈夫か?おっさん!」
そう言いながら、ワイドトレントに攻撃を加え。触手の注意を引く。
「ムネハル大丈夫?」
セリアが駆け寄る。無事そうで良かった。
「よか…、た。セ…リア…無事」
うまく呼吸が出来ない。
「喋らないで、
まじか、みるみる呼吸が楽になる。
「ああ、サンキュー助かったよ」
ふと、セリアが泣いているのに気がつく。
「なんだお前泣いているのか?」
「泣いてないわよ!動けるならさっさと立ちなさいよ」
そうだ、セリアの前で簡単に死ぬわけにはいかない。
俺はまだまだ弱い。
「セリア、俺が全力で
「ゼリアナさん、シン、
「わかったわ」
ゼリアナさんは答え、シンは笑う。
俺は集中する。
「
すごい勢いで魔力が削られていく。
しかし、ワイドトレントの動きは徐々に鈍くなる。シンとゼリシアさんも、動きに余裕ができ、触手にダメージを与える。
そこへセリアが、
再び壁を作ろうとする触手をついにシンとセリアが叩き切る。
ワイドトレントの外皮は剥がれ、更に
俺は
「闇よりいずる炎よ、我が魔力を糧とし我が敵を燃やし尽くすまで貪り喰わん。
放った瞬間、魔力を使い果たし全身の力が抜、倒れそうになるのをなんとか堪える。
放たれた青白い炎は、ワイドトレントに当たると、そのまま一気に燃え上がる。
「ゼリアナさん、月光草を!」
「分かってるわ」
素早く、ワイドトレントの根本にある月光草を採るとそのまま外にでる。その後を俺たちも続く。
そのまま扉を閉じると、俺たちは出口へと向かった。
俺は情けないことにほとんど魔力を使い果たし、何とか
二番手は俺の替わりにセリアが務めた。
王都へ戻ると速攻孤児院へ行き、月光草を煎じて飲ませる。
三日後にはセリアから治ったことを聞いてホッとした。
これで俺も気兼ねなく店に行ってユリアちゃんに会える。
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