第17話 おっさん初ダンジョンへ行く①

 王都に来てから一月ひとつきが経った。


 一月ひとつきもすると王都の生活にもだんだん慣れてきた。宿も長期滞在用の宿に泊まり、場所も大通りから離れた場所にすることにした。


 だいたいクエストのない一日の流れは、朝シンとトレーニングをして、そのあと朝食をとり弁当を持ち図書館へ行き、夕方に戻ると再びトレーニングをして、風呂入ってから夕飯。そして飲みにいく。

 もちろん綺麗なお姉さんがいる店も発見した。 

 この世界にもあってよかった。


 ちなみに図書館は、大人は有料だが1日500ダンと、本の値段を考えれば格安だ。

 

 シンはほとんど俺といっしょだが、セリアは教会堂の手伝いでたまに孤児院とかにもいくらしく別行動が結構多い。


 ギルドの仕事は、いただいたお金をしっかり装備に投資したし、ランク的にもそんな難しいクエストはなく、二週間もしたら、Dランクになっていた。

 我ながらいいペースだ。


 図書館や教会堂の本を読みあさり、この世界のこともわかってきたが、呪いの魔法についてはだいぶ苦戦している。


 まあ、簡単にわかるようならセリアもここまで苦労はしていないだろうし、全てたまたまの不運で、魔法でない可能性もあるしな。


「ムネハルー!」


 図書館で本を読んでいると突然セリアに大声で呼ばれる。

 あいつはわざとなのか?

 図書館でお静かには、全世界共通だよな?


「ちょっと返事なさいよ!」


 駆け寄るセリアとその先の俺に視線が集まる。


 俺は怒鳴りたいのを我慢して、静かに外に出る


「頼むから図書館で大声を出さないでくれ!」


「それどころじゃないのよ」


 大声を出したところで変わらんと思うが、観念して話を聞く。


「ちょっとやりたいクエストあるのよ」


「なんだよ、急に、何かあったのか?」


「孤児院の子が二十日病なのよ」


「二十日病?」


 どうやら、二十日病というのは体内の魔力が少なくなり、制御不能になった魔力が過剰反応して自己を攻撃をし、二十日ほどで死んでしまう物だといわれているが、未だ研究中だという。


 アレルギーみたいな感じだろうか?


「それを治すためには月光草げっこうそうが必要なのだけれど」


「ないのか?」


「採りに行かないと……」


「採取クエストか、面白そうじゃないか」


 そういうと、セリアの顔はパァっと明るくなった。


 その後シンにも話をして明日から出発だ。

 一応、ギルドのクエストを見てみると、Cランクになっていたけど、まぁ、大丈夫だろう。


 朝食を終え、準備を終えようとすると、扉を叩く物がいた。


「あら、来たわね」


 そう言ってセリアが扉を開けると、そこには、ユリアちゃんがいた。


 ユリアちゃんとは、夜のお店の娘で、そのことは一緒に行っているシンしか知らない。


 子供でも、年齢制限される店が少ないのがこの世界の良いところかもしれない。

 他の国はわからないが。


 俺とシンはが顔を見合わせてていると、セリアが彼女の前に立つ。


「彼女が、孤児院で働くゼリシアさん」


 そう紹介すると、


「どうも、ムネハルさん」

 

 声をかけてくる。


「どうも、ゼリシアさん」


 俺も答えると、セリアが不思議そうにする。


「なに、知り合いなの?二人して、シンも?」


「まあ、夜の飲み屋でね」


 確かにお金がなくて働いていると言っていたけれど、まさか孤児院で働いているとは。

 まさか、その子達のために稼いでいたのかもしれないと思うと、なんだか申し訳ない感気がする。


「まぁ、いいわ。ゼリシアさんが月光草まで案内してくれるわ。少し前まで冒険者で、何回か行ったことあるらしいわ」


 それは心強い。そして、ついに大人の人がパーティーに入った。しかも美人だ。ボブで目は大きく、背は小さめで、肌は白い。なぜNo.1でないのか不思議な娘だ。


 何にせよ素晴らしいクエストになりそうだ。


 王都を出て、南西の洞窟に入っていく。

 こんな街の近くに洞窟があるとは思わなかったが、奥の方は魔力が強く、昔儀式で使っていたそうだ。


 パーティーとしては、一番先頭にシン、その後に俺、セリア、ゼリシアさんとなる。


 経験者が、殿しんがりで後ろをケアしながら案内するのが良いそうだ。


 てっきり前にいて案内してくれると思っていたのに残念だ。


 洞窟の中は、じっとりとして外よりひんやりしている。俺は光魔法ライトで前方を、セリアが周り全体を照らす。


 朝に入っているにもかかわらず思ったより暗い。当たり前か。

 明るさに魔物は集まるが、魔物にとって見るという感覚が違うのかもしれない。


「もう少しで二体いるぞ」


 ここに来てもシンの探知能力は怖い物なしだ。20メートル以内なら探知する。


「いたぞ」


「?」


 一瞬どこにいるのかと思ったら、シンが天井へ飛びかかった。


 スライムだ。


 ヌルヌルとしたゼリー状の身体が天井から滲み出るように二つの物体がぶら下がっていて気持ち悪い。


 もっと可愛くできないのか。


 俺はシンが飛びかかった方とは逆の方のスライムへ左手をかざす。


火炎球ファイヤーボール


 シンの方も火炎を剣に纏わせて、切り込むと、幾つにも切る。


 スライム根絶させるのは難しいので、攻撃できないところまで持っていけば、さっさと先に進んだ方がよい。


 ぼたっと落ちたスライムが、ほとんど動かないのを確認すると前に進む。


「おっさん、二体いるぞ」


「あいよ」


 次に現れたのはスケルトンだ。


 シンがいつも通り駆けより、粉砕する間に俺が火炎球ファイヤーボールで倒す。


 かつてフォレストウルフすら倒せなかった火炎球ファイヤーボールも、今では大分威力が上がった。


 危なげなく一階はをクリアして地下一階へと向かう。


 


 

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