第16話 おっさん王都で小金持ち

 結局ドラゴンの肉塊は、俺とシュウトとダルン王国で大体同じ割合で分けることになった。


 ダルンには、シュウトによる寄付と俺の取り分を換金する手数料のようなもので、それによってダルンはお金を払う代わりにドラゴンの素材を多く仕入れたことになる。


 シュウトの手前、ぼったくりはないだろう。

 ガナリア村では田舎だったために、金貨で取引していたが、ある程度都会では通貨があり、ダルン王国ではだいたい金貨一枚一万ダンという単位になるという。


 ギルドは、簡易的な銀行の役割を果たしているので、分前わけまえはギルドを通して明日貰えることになった。


 出来るだけ金貨でもらえるようにしてもらったので、明日が楽しみだ。


 シュウトは、手続きだけ終わるとすぐにサントロ王国へ飛び立った。王都の謁見とかあると思ったが、現在魔法王国シンワへ出張中らしい。


 王様も出張があるなんて大変な世界だ。


 カルナッツさんにお城でのランチに誘われたが、シンもセリアも乗り気じゃなかったし、俺もあまり堅苦しいのは好きでないのでお断りをした。


 色々ともったいない気もしたが、致し方ない。


 入口近くの宿屋をとっといてくれたらしいので、ゆっくり散策しながら向かうことにした。


 城の門を出てしばらく歩くと、


「私ちょっと教会堂へ挨拶に行ってくるわ」


 というセリアの言葉に、確かに行先を決める時に言っていたな。と思い出した。

 王様とかではなかったんだな。


「そうか、じゃあ俺たちも」


「いいわよこなくて、三時間くらい手続きとかかかると思うから、だいぶ待つことになるわよ」


 そいつはなげぇな。


「そ、そうか、じゃあ先に宿屋に行っているよ。気をつけてな」


「うん、じゃあまた後で」


 セリアを送ると俺とシンはのんびり宿屋へ向かった。


 流石に王都なだけあって、建物は高く屋根はカラフルだ。


 おそらく城に近いほど金持ちで、上流階級なのだろう。宝石屋とかドレス屋さんとかある。


 更に進むと、あった!

 大きな本屋だった。


「ちょっと中見ていいか?」


「おっさんも好きだなぁ」


そう言ってついてきてくれる。


 中では、本が一冊一冊ケースに入っている。中には上級魔法のものや、魔法を色々カテゴライズしている本などがあった。


 ただ。ケースに入っているので、中は読めない。


 残念だがしょうがない。


 本の値段は、色々あったが安くても、一万ダンもする。

 早く古本屋と、図書館も見てみたいものだ。


 本屋を出るとすぐにギルドがあったので、金貨をダンにしてもらう。

 とりあえず金貨20枚を20万ダンにしてもらえば大丈夫だろう。


 まさか異世界でもお札で買い物することになるとは思わなかった。


 レストランに入ってご飯を食べた後も、周りをみながら、宿屋へ向かった。


 店は入口に近づくにつれ、レストラン街から、バーや飲み屋になり、更に進むと食料品売り場やテキヤのような店になっていく。


 宿屋に入ると、向こう一週間分は支払い済みになっていた。


 なんともありがたい。


 風呂場でシャワーだけ浴びて部屋に入るとすぐに眠くなり横になった。


 起きた時にはすでに夕方になっていた。

 

「起きたか?おっさん」


「おお、今起きたよ」


 しかし、まだ寝れる。考えてみれば、一日歩いた後に盗賊団やドラゴンと戦ったのだ。

 疲れていないわけがない。


「ただいま」


そう言ってセリアが戻ってくる


「あれ、セリアもう一部屋借りてあるはずだけど」


「キャンセルしたわ!私だけのけものなんてずるいわ」


 そう言って風呂へと向かう。

 

 夕飯を宿屋の食堂で食べると、様々なパーティーがいて、わかっていたけど驚いた。


 中にはまるで魔物のような奴もいるが、きっと亜人とかで魔物ではないのだろう。

 

 ただ、子供を連れているのはほとんどいなかった。やはり小さな頃から冒険者というのは少ないのだろう。


 夕飯は、大きな肉団子の入ったパスタと、野菜がごろごろ入ったコンソメスープ、そしてパン。この国だか、この世界では常にパンが出るのかもしれない。


 お腹いっぱいになるとまた眠くなったので、部屋に戻る。


 布団で横になると、セリアが入ってきた。


「なんだ、お前シンの方で寝ろよ」


「……」


「おい、聞いているのか?」


「そんなに嫌ですか?」


 なんだ、そんな風にこられるとは思わなかった。


「嫌じゃないけどさ」


「ならいいでしょ」


 そう言われるとどうしようもない。


「私、いつも一人で、お父様ともお母様ともいっしょに寝たことなかったから」


 ぐ、忘れていた。

 確か彼女の母親はすぐに亡くなったし、父親は王様なのだから、そうそういっしょにならないだろう。


「そうか」


俺は何も言えず、ずるずると睡魔に引き込まれていった。


 

 あいたっ!


 なんだ急に攻撃をくらったかと思ったら、セリアの足だった。

 こいつ!


 いや、そうか。

 誰とも一緒に寝たことが無かったと言っていたな。


 寝相が悪くても誰にも注意されなかったのだろう。俺は少し距離とってもう一度寝た。


 次の日起きてみるとセリア一周して普通の仰向け状態だった。たいしたもんだ。


 朝にシンとのトレーニングを終わらせて風呂に入り、セリアを起こし朝食を食べてからギルドへ行く。

 宿屋に近い出張所の方だ。


 ついに棚ぼたをいただく時がきた。

 ここでもボブカットの可愛らしい女の子が対応してくれる。


「お待たせしましたムネハル様」


 そう言って確認ように見せてくれた数字は、金貨2000枚と1000万ダンが記入されていた。


「おお!」


 俺は小金持ちになったかもしれん。いや、これを三人で割ったら一人頭約金貨1000枚相当か。


 うむ、早期リタイアはまだ厳しそうだ。年金とか無さそうだし。


 と思って聞いたら、ギルドにもあるらしい。功労金という制度が。


 ギルドへの貢献度が高いほど功労金も高い。


 俺も頑張らなきゃな。

 早期リタイアを諦めて、クエストを見るとEクラス向けのクエストは結構楽そうだった。


 しばらくは、クエストやって図書館で本でも読むとしよう。

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