第15話 おっさん王都に着く

 シュウトは残った心臓ハツ横隔膜ハラミ も氷付けにすると、それをうまく皮の上に乗せる。

 ちょうど皮が風呂敷のようになって全てがその上に収まっている。


「ブルー!」


 呼ばれたドラゴンブルーは大人しくこちらにやってくる。


「私はこれからサントロに戻りますが、ムネハルさん達はどうなされます?ギアリアの街もしくは、ダルンかサントロの王都ならお送りしますけど」


 一気に王都に行けるか?ラッキー!

 ただ、ギアリアの街も面白そうなんだなぁ。


「どうする?」


 俺は2人にお伺いを立てる。


「私はできればダルンの王都で、挨拶をしときたいのだけれど」


「俺はどこでも良いよ」


 まあ、街はでかい方が楽しいだろう。


「なら決まりだな、ダルンの王都まで頼む」


「かしこまりました。じゃあ乗ってください」


 元気よく背中に乗る若人わこうど2人。どう考えてもそんな不安定な所より、皮の風呂敷の方が安定して楽だろう。

 そう思って俺は風呂敷の方へ乗る。


「ムネハルさん、そこで良いのですか?」


「おお、俺はここでのんびりさせてもらうよ」


「分かりました。気をつけて下さいね」


「ん?おう」


 ヌレドアや、ドラゴンが出てきた時はどうなるかと思ったが、結果としてドラゴンのホルモン食べて、ドラゴンに乗せて貰えるんてこの世界も悪くない。


 羽をはためかす音が聞こえると、砂煙が舞い、多くの砂が入ってくる。俺は腕で口を押さえる。まさか、こんなおまけがついてくるとは思わなかった。


 上昇し始めると、少しずつ地面が遠ざかる。


「おお!」


 ついに浮いた。

 ついでに俺のテンションもどんどん上がる。


 ドラゴンブルーが前に進んだと思うと、思い切り風呂敷は傾き、浮遊感が全身を襲う。


「うおぉぉぉっ!おちるぅぅ!!!

 

 声を出しているのにシン達はきづかない。

 

 やべぇ!

 こんな所で落ちて取り残されるなんて冗談じゃない。

 何とか皮に残された肉片を掴んで逃れる。まさか、こんなおまけも付いているとは思わなかったよ。まじで。


 ドラゴンブルーがスピードに乗ると、少し安定してきて風呂敷の下をみる。

 地面は滑るように流れ、遠ざかる。

 再びテンションが上がる。頑張れば俺もドラゴンを扱えるようになれるだろうか。


 空高くから見る景色は、絶景だった。

 ガナリア村は見えないが、今まで歩いてきた道は小さく、遠くの山や離れた場所の湖が見える。

 しばらくして賑やかな街が見えると、あっという間に通り過ぎる。

 

 前のめりのになって景色を見ると、急激にドラゴンブルーが旋回する。

 風呂敷が横に大きく傾く。

 

「ぐおおおおおっっっっ!おちるっ!おちるぅぅぅ!」

 

 上の方から笑い声が聞こえる。


「ねえー!ムネハルー!だーいじょーぶー?」


 セリアの声が笑っている。

 あいつセリアわざとだな。


「すいません、ムネハルさん」


「大丈夫ですよ」


  シュウトの声に大人に対応で答える。子供相手にそんな怒るわけにはいかない。


「ねえ、シュウト一回転して!」


「セリア様、さすがにそれは」


 あのガキセリア、○ロス!!


 30分ほど飛んだだろうか、遠く大きな建物が見える。ノイシュバンシュタイン城のような建物はおっさんの中2心をくすぐる。


「ムネハルさーん、ダルン城に使い魔送りますけど、何かことづけありますか?」


「何もありませんよ!よろしくお伝えください」


「はーい」

 

 その声が聞こえると、キラキラ光る小さなドラゴンのような形がお城へと向かっていった。 


 会ったこともない人にことづけも何もない。


「ムネハルさん、ちょっと旋回します」


「了解」


 今度はゆっくり傾くと、ドラゴンブルーは城の上をぐるぐると周り、使い魔が戻ってくるとゆっくりと庭へ降りた。


 庭に降りると、継いでドラゴン《ブルー》も着地する。

 シュウトと2人も降りる


「おっさんよかったな、楽しそうで」


 降りてそう言うシンは、本気で言っている可能性があるのが怖い。


「どうもお久しぶりです、セリアーナ姫にリュウト様。そして初めまして、ムネハル様にシン様」


「お久しぶりです、カルナッツ様」


 シュウトがうやうやしく礼をすると、セリアも続く。

 

 俺もなんとなしに流れに乗って挨拶するが、シンは結構人見知りだ。


 村ではそんな感じしなかったのだが。


「して、この肉塊はどのように」


「ああ、それなんですけどムネハルさん、このドラゴン退治の分前わけまえどうします?」


「え、分前わけまえ?」


「ええ、私が来るまで戦っていらしたでしょ?」


「へ?まあ、戦っていたというか襲われていたというか」


「ははは、襲われていたのなら戦っていたではないですか」


 いやぁ、助けてもらった上にここまで運んでもらって分前くれるって、あんたいい人だよ。


「そんなのいらないわよ、ねぇ、ムネハル」


「はい?」


 あのガキ!

 いや。確かに何もしていないのに分前もらうのもな、でもくれると言うならならもらいたいのだが。


「そうですね、助けてもらって更に分前をいただくなんて。第一、そのかたまり頂いてもどう処理をすれば良いのか」


「わかりました、では遠慮なくこの竜魔石は私がいただきます。残りは私が適当に決めてよろしいですか?」


「よろしいもなにも、お願いします」


 流れを見ていたカルナッツは笑う。


「さすが素晴らしい配慮ですな。最年少で10傑に入るだけはある」


「え、シュウト10傑になったの?すごいじゃない」


 セリアが驚く。


「いえいえ、まだまだ末席ですから」


 俺はそんな上流階級っぽい話をのうわの空で聞きながら、城下町を眺めていた。

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