第13話 おっさん、心が折れる
ヌレドアは何かを打ち上げたかと思うと、上空で赤く光る。
「撤退信号かしら」
「多分な」
それを見て包囲していたヌレドアの一団は、あちこちへと逃げ出した。
ヌレドアとさっき接近した3人はまだ逃げない。
ドラゴンが再び降下してくる。おれ達も備える。
滑空を始めたドラゴンは、ヌレドアの方へ向かう。しかしヌレドア達はドラゴンの急接近にも関わらず、落ち着いているように見える。
戦う気だろうか。
すんでのところで、大きく砂が舞い木がしなる。
その直後、
ズシャァ!!
大きな音がし、ドラゴンは頭を地面に打ち付けていた。
かなりの集中力と度胸が必要だ。タイミングを少しでも間違ったら即エサだ。
「おっさん、逃げるぞ」
包囲網はもうない。ヌレドアがドラゴンと戦ってくれるのなら好都合。
「おう!」
おれ達は、ギアリア方面へと駆け出す。
しかし、ヌレドアとドラゴンの方を見ると、ヌレドア達もこちらの方へ駆けてくる。
「あいつら、俺たちを巻き込む気だ」
それに気がついたドラゴンは飛翔すると今度は高く上昇せず低空飛行のままこちらに周りこむ。
目の前に見えるドラゴンは、高さ10メートルはあるだろうか。翼を入れればもっと大きいだろう。
堅そうな灰色の皮膚に鋭い眼光に睨まれただけでちびりそうになる。
後方のヌレドアが追いつく。
「抜け駆けは良くないな。さ、一緒にドラゴンと戦おうか」
「おまえ!」
シンは憎らしそうにヌレドアを見る。
さすがに、ヌレドアもこちらに仕掛けてこない。
「仕方ないわね」
セリアはそう言って結界を作る。
「ドラゴンの一番弱いところは、翼の付け根だと言われてる。まずは翼を剥ぎ取り機動力を奪えば、勝機がある」
ヌレドア達は、そう言うと二手に分かれてドラゴンの両サイドへと周りこむ。
ドラゴンは、こちらを向いて口を大きく開ける。
その隙に口めがけてセリアは呪文を放り込む。
「
盗賊を蹴散らした時とは段違いの光線がドラゴンの口の中へ直撃する。
一瞬頭を大きく揺らしたが、再びこちらを向くと大きな
「
できるだけ大きく、3メートル×3メートルほどの凸レンズ状の壁を作る。
しかし、氷の
「
セリアがフォローに入る。
ギャンッ!
ドラゴンが悲痛な声を上げると
見るとドラゴンの羽から血が流れ出しており、そこに再びヌレドア達は、
ドラゴンは、
尻尾の攻撃を躱すとそこへ、
2人とも
その間にもヌレドアともう一人はドラゴンの羽に
プロだと思った。仲間がやられても、何をすることがベストなのか、なすべき事をよく理解していて実行に移す。
ドラゴンが思わずヌレドアの方へ身体を向けると羽の付け根をこちらに見せる。
「
「
俺とセリアで羽の付け根に魔法を当てると、シンは結界を飛び出し、ドラゴンの方へ向かう。
しかし、飛び出してすぐにシンもヌレドア達も弾けるように吹き飛ばされる。
「ち、あそこで
代わりにみるみる羽の付け根が修復されていく。
「
セリアが力なく呟く。
ヌレドア達を見ると、ドラゴンから遠ざかっている。
「逃げたな、判断が早くて的確だな。おれ達も逃げよう」
シンがそう言うと、ドラゴンから遠ざかるように逃げる。
ドラゴンは羽の付け根が治癒すると飛び始め、こちらは向かって来た。
あっという間に追いつかれた。
今更ながら気づいたが、ドラゴンは人数が多い方を狙っていたのかもしれない。
もしそれに気づいていたのなら、ヌレドアの戦術には脱帽する。
ドラゴンが再び前に現れた時は、全ての身体の力が抜けるようだった。
心が折れた。
そんな中、セリアは結界をはり、シンはドラゴンへと向かって行く。
その姿を見て、なんとか心を取り戻す。
倒すのは確かに難しい。
が、逃げる方法ならなんとかなるのではないか。
迷っている暇はない。
「闇の世界よりいずる力よ、甘き誘惑となりて虚の世界へ
俺は渾身の魔力を込めて
黒い霧が、ドラゴンの頭に纏わり付く。
一瞬ドラゴンの頭がふらつく。
「やったか?」
が、すぐに身体を起こして体勢を立て直すと、大きな声で吠える。
グヲォォォォッ!
腹の底からの声に全身が痺れる。
しかし、心は折れない。魔力はまだある。
その時、遠くの方から似たような雄叫びが聞こえた。
「まさか、仲間を呼んだのか?」
「まさか。もしそうなら、連れ帰ってもらいましょう。ドラゴンが2匹になるか、助かるか二つに一つね」
嫌な二択だ。
本当に二択だろうか、不安しかないのだが。
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