第7話 おっさんゴブリン退治に行く②

 先に進むシンの足が止まる。


「おっさん、70メートルほど先の木の上、右と左に2匹ずつ、木の下に1匹ずつ計六匹いるけどどうする?」


 上と下両サイドからの挟撃か。

 ゴブリンがこんな戦術的な戦いをするとは知らなかった。


「このまま真っ直ぐ行くわけにはいかないから、周り路をして右の木の上のやつから狙って行こう」


「了解おっさん」


 まじ探知能力便利だ、こんな時代でも情報社会なのか。いや、戦いにおいて元々情報は必要で、それを使う技術が上がっただけか。


 今までも歩きにくかった足場は、路を逸れることで尚更悪くなる。


 少しずつ近づき、木の上のゴブリンの姿も見えてきた。もう少しで射程に入る。


「気付かれた」


 突然のシンの声がしたかと思うと、ギンッと金属が重なる音が聞こえる。


 その音に反応して木の上のゴブリンが弓を構える。

 

 まずい、火炎球ファイアーボールだと当てるのに厳しい。


 俺は風の精霊をイメージすると詠唱を始める


「風よ吹き荒れろ、その偉大なる力は刃となりて敵を引き裂け。風刃エアブレイド!!」


 刃となった風が木の上にいる二匹のゴブリンを真っ上下二つにすると、そこから血は吹き出し、ポトリと落ちる。


 その直後シンのいる方からゴブリンの断末魔が二度聞こえる。


 シンの方へ駆け寄ると、ゴブリンファイターの死体が二つ転がっていた。


 残りの二匹は逃げたのか、奥の方へと走って行った。


「シン、すげぇな、ゴブリンファイター二匹倒すなんて」


「おっさんも、風刃エアブレイド良かったぜ」

 

 シンに褒められまんざらでもない気持ちなったが、ゴブリンファイターまでいるのは意外だった。

 ギルドでは、そんなこと言ってくれなかったが、結構アバウトな人多いから、そういうものなのかもしれない。

 

 さらに巣に近づくと、四匹ほどのゴブリンが攻めてきたが、火炎球ファイアーボールとシンの斬撃で駆逐していく。


 巣はすぐに分かった。洞窟があり、その周りには木と葉でできたベッドや土で作られたような椅子があり、さながら小さな集落のようだった。


「何故ですか」


突然の頭の中への言葉で驚きシンの方を向くと、シンの方もこちらを向いていた。


「おっさん、きこえたか?」


「ああ」


 洞窟な方を見ると、ゴブリンファイター二匹と白いゴブリンが出てきた。顔形かおかかたちも普通のゴブリンと違い、人のそれに近いように見える。が、頭には角が生えている。


「どうして私たちのテリトリーを脅かそうとするのですか?」


 再び聞こえてくる声はやはり頭の中だ。


 あのゴブリンに間違いない。


「どうするおっさん、まさかゴブリンが念話テレパシーを使うなんて驚いた」


「いや、俺も」


 確かに驚いた。が、異世界来られるくらいなのだから、もはやなんでもありか。


「よし、近くまでいくか」


「大丈夫なのか?このまま吹き飛ばした方が良いだろ?」


 シンは心配そうにこちらを見る。


「わざわざ念話テレパシーして来るくらいなのだから、してやろうじゃないか」


 そう言ってホワイトゴブリンのところまで行くと、人間というよりエルフっぽい顔だちだ。

耳も長くなければ、背格好今までのゴブリンより少し大きいくらいだろうか。。目鼻立ちははっきりしていて。口もでかい。


「それでなんだっけ」


俺の言葉にホワイトゴブリンが反応する


「なぜ、私達の住処を狙ってここにきたのかです。結界を張って人間が寄り付かないようにしていたのに」


 ホワイトゴブリンは相変わらず念話テレパシーで話す。

 なんだかメールとかでコミュとる人みたいのを思い出す。


「なぜって、それはここでゴブリンが増えて村が襲われたら困るからだろ」


正直よくわからないけどそんなとこだろう。

つまりは村にとって危険なのだ。


「襲いません」


「え?」


「襲いませんので、お引き取りください」


 やばい、意外な展開だ。でも、このまま帰ったらクエスト失敗で、他の冒険者来ちゃうしな。


「信じられないね」


 シンが割って入る


 いやいや、シン君、ここはちょっと冷静になって考えようぜ。なんだかシンが喧嘩腰だ。


「俺たちはここを殲滅に来たんでね、大人しく死んでもらうよ」


 ちょっとシン君?


「殲滅ってこの巣をどうするんですか?」


「焼き尽くすに決まってるだろ」


「ちょっと、シン」


 俺の声は届かない


「なんてことを」


「ちょっとまて、シン、何とかならないのか?」


「おっさん、ここで見逃して、のこのこ村に帰って、その後ゴブリンが大勢で襲ってきたらどうするんだ?いかにあの村に冒険者がある程度いたとしても、こいつの入れ知恵でどこまで強くなるかわからないぞ」


 シンの言うことももっともだ。それは一番最悪だ。


「いや。しかし」


「いくぞ、おっさん」


「決裂ですか、残念です」


ホワイトゴブリンがそう言ったかと思うと急に雰囲気が変わる。


「ブラスト」


ホワイトゴブリンが言い放ったかと思ったら、足元から完全吹き飛ばされた。


 シンはさすが、ジャンプ一番風圧を避けている。


 関心している間にホワイトゴブリンは、石針ストーンニードルでこちらに追い討ちをかけて来る。


 魔法は間に合わない。

 

 無数の石針ストーンニードルが突き刺さると、激痛が走り杖を落とす。


 正中線は何とか杖で守ったし、皮の軽鎧で守られた部分の傷は浅い。

 ただ剥き出しの腕と脚の部分は、もろに突き刺ささっている。


 ゴブリンの方を見ると、ゴブリンファイターが二匹こちらに向かって来ている。


 ホワイトゴブリンはシンと戦っているが、さすがのシンも巧みな剣撃と魔法で押されている。


 どうする?


 とりあえず最低限血を止めるべく回復呪文ヒールを自分にかけながら頭を働かせる。


 回復させながら、杖を拾い木にも垂れながら立ち上がる。


 考える時間はあまりない。


 仕方ない。

 闇魔法を使おう。

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