第3話 おっさん魔法使えるようになる

 歩きながら教会堂のことを聞くと、光、火、水、風、土、闇の六属性の教会堂があり、大抵の町や村に六つ以上の教会堂がある。

 生まれた人はすぐにいずれかの教会堂の洗礼を受けるらしい。


 冒険者以外でも生まれてすぐに、最低一つ洗礼を受けるのは、受けることによって体内の魔力が解放されて病気などに耐性をもつからだ。


 また、冒険者を目指す人は当然多くの洗礼を受ける。


 なるほど、なら俺も洗礼を受ければ魔法が使えるかもしれない。

 正直そもそも魔力がない可能性もあるようなのだが。それは、洗礼を受けるまで考えないようにしよう。


「着いたぞ…おっさん。ここが光属性キルヒス教の教会堂」


 そこは小さくボロい建物があった。

 小さな村ではこういうのも珍しくなく、建物があるだけましで、簡易祭壇しか無いのも結構あるらしい。


 とはいえ、こんなところにお姫様が。

 心が躍りテンションが上がっていく。

 というか、もはやちょっと緊張してる。

 

 扉を開けると、元の世界の教会と同じような作りだった。小さくボロいが、三人ほど座れそうな椅子には小さな長テーブルが付いている。

 長椅子と長テーブルが6セットある。


 よくみると前には小さな黒板もあり、どうやら学校の役割も果たしているが今日は休みらしい。


 「すいません」

 

 そう声をかけると祭壇横のドアから少女が、現れた。シンよりも同じかもう少し幼いかもしれない。


 装飾は少し派手で、あちこちに鈴のようなものが付いていて、被ってる帽子なんてなんか扇型ぽいものの先に玉がついている。

 なんだか電波が出てそうだ。この世界に電波があるかわからないけど。


「すいません。洗礼受けたいんですけど誰かいるかな?」


「洗礼ですね、ではこちらへ」


「?」


「何か」


 少女の視線が冷たい。


「この娘が、セリアーナ王女だよ」

 

 シンが横から楽しそうな顔をして覗いてくる。


「なんだって?」


 思わず声を上げた俺にさらに王女は冷たい視線を送る。


「私がセリアーナですが何か」


 まじ目つきが怖いんですが。

 シンを見るとシンは笑いを堪えている。が、その笑いはすでに漏れている。


「あの、先日はありがとうございました。助けていただいたようで」


 その言葉を無視してセリアーナは続ける。


「で、洗礼はどうするんですか?」


「あ、お願いします」


シンといい、セリアーナといい、この世界の子供おっかねーよ。

 

 洗礼自体は簡単であっという間に終わった。


 片膝をつき、頭を差し出すとそこへセリアーナが杖をかざす。

 頭から全身が、一瞬ポカポカとあったまったかと思うと、元の状態へと戻る。


 これで本当に魔法が使えるようになったのだろうか。


「それではお布施を」


なるほど有料なのか、いくらぐらいが相場なのだろうか。こんなことなら来る前にシンに聞いておけば良かった。


 俺は金貨一枚を渡すと彼女は フンッと鼻を鳴らしてその場からまた奥の方へと消えていった。


 なんなんだよ。この世界の子供達って。


 何にせよ魔法が使えるようになったはず

 早くためしたい。


「ちなみにお布施って、相場どのくらいなんだ?」


「銀貨二枚くらいかな」


 おかしそうに笑うシン、若干血圧が上がったが、助けてもらったのだしこれで魔法が使えるのだから良しとしよう。

 おっさんの血圧をあまり上げないで欲しいものだ。


 教会堂なら中にはいくつか本があり、勝手に取り出すとそのまま開いてみる。


???


あれ?古代文字とかなの特殊な文字なのかな?


「シン、ちょっと読めないのだが、古代文字か何かか?」


「そんなわけないだろ、今おっさんが持っているのが、初級魔法の本だよ。まさか文字読めないの?」


 まじか、そんなことあるのか。

なぜ読めないんだ。むしろしゃべれていることがおかしいのか?

 とりあえずシンに読んでもらうことにした。


 初級魔法と下級魔法の本があるらしい。

 他にはキルヒス教の教義や教本、後は算数などの本も置いてあるらしい。


 全部読んでみたいところだが、ひとまず初級魔法のライトと、下級魔法のヒールのところ読んでもらうことにした。


 詠唱と無詠唱があって、普通詠唱するのは慣れるまでで、無詠唱にしていく。当然難しい魔法ほど無詠唱も難しくなる。計算で言うなら詠唱は筆算で、無詠唱は暗算のようなものらしい。

 まあ、用は魔法の理りをしっかりイメージするか、言葉の力(言霊ことだまの力)を使うかの違いで出来るだけ無詠唱でいったほうが良いらしい。


 とりあえず早く試したい。


 外に出ると早速試してみる

 杖をかざして声を上げる


「ライト!」


 杖の先が鈍く光る。


「おー、やったぜ!ついに魔法が使える」


「おっさんよくそんなんで今まで生き残れたな」


 シンの呆れ顔を横目に、魔法を使えたことに歓喜する。


 そしてそのまま、他の教会堂の洗礼も全て受けた。

 

「なあ、魔力をあげるためにはどうすれば良いんだ?」


「出来るだけ魔力を使うことだよ」


 よし、今日からどんどん使って行こう。


 しかしまじか、さすがに文字が読めないのは困ったな。


 シンもいつまでいっしょにいてくれるかもわからんしな。

 

 このままだと仕事も出来ないだろうし、何とかしなければ。

 



 


 


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