青春モラトリアム

青春モラトリアム

　空気を読む。

この子と一緒にいるときは、この話をしよう。

あの子と一緒にいるときは、あの話をしよう。

そうしたら、だあれも浮かないから。

浮くって、何か？

そりゃあれよ、馴染まないのよ。周りと。

え、物理的に浮くのかって？

あー、もう。

バッカじゃないの？

空気、読んでよ。

　あ。

また、出ちゃった。

　本当は、空気なんて読みたくない。

　海に行きたいの、私。

つまんない日常から抜け出して、海に行くの。

電車に揺られて。

電車の窓から流れる景色を見て、私。

私はきっと、

　泣くんでしょ。

　え。

　あれ、ごめん。

空気、読むところだった？

　ううん、読まなくていいの。

空気は、読むものじゃないのよ。

　そう？

　ええ、そうよ。

　泣いているのかい？

　いいえ、違うのよ。

　海に行こうか、明日。

　明日は、学校よ。

　いいじゃない。

空気、読むの疲れたでしょう。

空気、吸いに行こうよ。

　..............。

嫌ね。

まだ、電車にも乗っていないのに。

視界がぼやけて。

　決まりね。

明日に備えて、今日はもう帰ろうか。

　ちょっと、空気・・・

ま、いいか。