第36話 冒険者、家を買う②
かつてこの家の家主にしてこの家を設計した建築家の男、テージ・フォレストバレー。噂だと警戒心の強い人物だったらしく、晩年は家の安全性を高めるために屋敷に様々な罠を仕掛けていたらしい。
「罠だらけとは聞いていたけどいきなりかよ! というか完全に殺しにかかってきてたじゃねーか!」
リョウは前途を想像して嘆く。もし自分が踏んでいたらきっとただでは済まなかっただろう。
「おい大丈夫か、サクラ」
「ああ、右足が黒焦げになったけど、無事だぜ」
「無事じゃねーだろ何一つ」
本人は平気そうだがその足は痛ましいことになっている。
「どうしましょう、これじゃあ迂闊に進めませんね」
「まさかいきなりこんなフルスロットルで来るとは思わなかったぜ」
あまりに殺傷能力の高すぎる地雷、というか最初の罠にしてはアクが強すぎるぞ。
「というかもっと段階踏んでくれよ」
確かにこの単純な罠、奇襲性も高く、単独犯ならそこでお陀仏、複数犯だったら運よく回避した共犯者の心をくじくことになる。
扉まで約四メートルである。まあ普通に飛んで届く距離ではない。
「どうするのリョウ、私たちだけならあっちに行けるけど」
舞空術もとい飛行能力があるアテナ一人なら何とかなるだろうが、どうしたものか。
「まあこの方法しかないかな、サクラ」
「はいよー」
いうや否やサクラがリョウの服の奥襟を掴み、二人の体を持ち上げて、そのままぶん投げる。
「あああああああああああああああああああああ」
地雷原を軽々乗り越えた。作戦が成功したことを心の中でガッツポーズしたのも束の間。
「あーすまねえ、片足だから加減が」
「ぐはあ!」
巨大な扉にそのまま激突し、玄関を突き破る。
「大丈夫か、おい」
サクラは普通に跳んできた、片足で。
「いてて」
「大丈夫?」
心配そうにリョウの顔を覗き込むアテナ、彼女も飛んできた。
「リョウさーん、私を剣にしてくださーい」
グラーシーザーも魔剣フォームにしたらリョウの手元に来た。
「まあ第一関門突破ってことで」
さっきのサクラの投擲で扉が壊れたのは想定外だったが、侵入成功。
中も外観のイメージと違わぬ、洋風のデザイン。赤ワイン色の絨毯になんか偉い人そうな人の胸像とか甲冑のインテリア、この屋敷の主であろう巨大な肖像画。
「何というかなんとなく内装の想像はついていましたけど、いざ見ると何というか」
グラーシーザーの言う通り、その豪華さに目を奪われていたその時――半透明な巨人が現れた。
『ようこそ、我が屋敷へ』
エントランス、二階にある巨大な肖像画にかかれているのと同じ人物――テージ・フォレストバレーの姿であった。
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