第29話 勇者VSオークVSビッグジョーズ②

 損耗のない戦力でほとんどのダメージを与えられなかったのに残った戦力でどうしろというのか、リョウはぼやく。

「最近こんなやつ多くね、物理攻撃効かないとか。こちとら箪笥の角に小指ぶつけただけで瀕死になるくらいなのによ」

「それは弱すぎじゃねーか」

「リョウ、サクラ悠長に談笑してる場合じゃないわよ」

 少し緊張感の足りない二人にアテナは言った。

「さっきのタイダルウェイブで下の村に被害が出てるわ、さっきのは逸れたけど次はやばいかもね」

「まじかよ」

 やっぱり弱点を突かないといけないかな、でも雷の魔法があれば一番いいんだが。

「雷属性を撃てるのって」

 脳筋のオークたちには魔法が得意なものはいない、勿論うちのパーティにも雷属性魔法を撃てる者は――。

「アテナ、お前雷属性魔法は撃てるか」

「それどころか、この世の全ての魔法が使えるわ」

「……攻撃してくれない?」

「神の世界のルールでこの世界の生物に攻撃できないルールになってるからダメ」

「初回だけサービスとか……」

「ないわ」

 あーマジでどうしようもない。

「ま、生物は攻撃できないだけで使えるのは使えるわよ」

 一応は使える――もはや可能性があるとすればこれしかない。

「……ものすごく無茶な作戦思いついたけど、言ってもいいか」



「最初に……サクラ!」

「おうよ、はああああああああああああああああ!」

 その気合に呼応するかのようにサクラの周りに豪炎が渦を巻く。

「サクラ、もっと頼む!」

「おうさ!」

 さらに火力が増す、さっきのタイダルウェイブの影響で下がっていた気温が一気に上がる。

「はああああああああああああああああ!」

 更に極限まで気合を込める。

 勿論攻撃が来ると思っているキメラテック・オーバー・シャークの口腔に大きな水塊ができる。

「オークの皆さんは俺と一緒に、あいつの攻撃を引き付けてくれ」

 残った全員が散開して可能な限りの遠距離攻撃を行う。オークの長が持っていた。

「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」

 オークの長がその巨大なハンマーで地面を叩くと、大地が隆起して大きな土壁がサクラの前に出来上がる。

 放たれた水流が壁に着弾し、拡散する。その壁を壊さんと水塊を連射する。

「させねえよ!」

 全員でサメを攻撃して、その攻撃を逸らそうとするが狙いをつけさせる時間を少し遅らせる程度で攻撃を阻止するに至らない。

「ぶおおおおおおお!」

 オークの長が狂乱した、このままでは力を溜めているサクラがやられてしまうことを心配しているようだ。

 壁の後ろで上昇気流が起きるほどに激しく力を放出させているサクラ、果たして壁が壊れるのが先か、それとも――。

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