番外編2 とある異邦人の記録:魔王軍について
「ふー」
薬草の採取という簡単な仕事だったはずなのに、森の中で二足歩行のキノコに出会ってしまったので、一戦交えた。まあほとんどサクラが倒したから別に大変なことはないのだけれども。
(サクラが)倒したお化けキノコを見て、リョウはふと思う。
「なあ今倒した奴も魔王軍だったりするのか」
この世界の魔物は大きく分けて二種類に分類される――早い話が魔王軍に所属するものとそうでないもの。早い話が明確な意思をもって人間の世界に侵攻するものとただ野生で生きているものである。
異世界に召喚された勇者――リョウが召喚された目的は魔王軍の首魁を倒して世界を救うことである。
「いや違うわね、野生のモンスターよ」
「全然わかんねえや、というか俺は何と戦うために召喚されたんだ」
正直魔王軍がどんな奴らか全然知らないので、何を倒しに行けばいいのかさっぱりなのである。
「そうね、ここいらで敵について詳しく説明した方がいいのかもね。決して本編のアイデアが出ないから、設定の説明で何とか食いつなごうとか、余りにも書くのが遅いから、妥協しまくっているとか、そういうわけじゃないから」
「いやなんの話?」
こことは別の世界の話はさておき。
「魔王軍の最大権力者はもちろん魔王、だけど今はほとんど表舞台に立つことはないわ、だから実働部隊で一番偉いのは最上級幹部のカオスキマイラドラゴンとデスダークサタン」
「相も変わらず名前ダサいな」
「で、その二体の下には各々三体ずつ最大幹部親衛隊の悪魔がいるわ」
どうやら軍って名乗るぐらいだから、色々な役割の奴がいるようだ。
「そしてその親衛隊に側近として、各々に暗黒四天王が存在しているわ」
「えーとつまり、六体の親衛隊に対して四体、つまり二十四体……」
「さらに格四天王の直属の部下に七体のアンデッドキングがいるわ」
「えーと、二十四人に七人の配下ということは、アンデッドキングは百六十八体?」
キングという言葉の意味が崩壊している気がする。
「その上、アンデットキングの部下には通称十二の使徒って呼ばれる存在がいるわ」
「……百六十八に十二体、二千十六体」
「あとは十二の使徒の下には二十四の魔眼っていうやつらが――」
「いや多すぎだろ、ねずみ講かよ」
今まで突っ込みを我慢していたが、堪らずに指摘。ちなみに二千十六に二十四人、つまり二十四の魔眼は四万八千三百八十四体いることになる。
「そいつら全員と戦わないといけないのかよ……」
リョウがアテナの話に肩を落とすのと同時に、二人の少し前を歩いていたサクラがリョウたちを手で制した。
「どうしたサクラ」
「何か来る」
けもの道の真ん中に仁王立ちする甲冑。遠目で見たら高貴なる騎士だが兜を装着した顔面は爛れて、右の目玉が取れかけている。
こちらを認めた腐った騎士が名乗りを上げる。
「我はデスダークサタン親衛隊が一人、ウヴァルの側近たる四天王フラウロスの直属の部下であるアンデットキング、リッチの忠実なる僕、十二の使徒ブロンの配下である二十四の魔眼の構成員グモリー、そしてその――」
名乗りが終わる前にサクラの拳が奴の顔面を捉える。
アンデッドの腐敗した肉体は、まるでギャグ漫画のように吹き飛び、視界から消えた。
「え、なんか言った?」
普通名乗りの時は攻撃しないのがセオリーなのだが、容赦ないなこいつ。
「で、これは誰なんだ」
リョウはアテナに質問する、名乗りの途中で瞬殺されたので、魔王軍の下っ端ということしかわからない。
「デスダークサタン親衛隊が一人、ウヴァルの側近たる四天王フラウロスの直属の部下であるアンデットキング、リッチの忠実なる僕、十二の使徒ブロンの配下である二十四の魔眼の構成員グモリーがリーダーを務める部隊の構成員の一人であるアンゴルの――」
「あ、もういいです」
――魔王を倒して世界を救うのは時間がかかりそうである。
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