カクヨム限定話 フィオーネとお勉強(1)
「戦士も筆記試験を導入するぅ?」
私は戦士部長ララ様に思わずタメ口をきいてしまった。ソルトさんのおかげでダメダメ戦士だった私は管理成長できた。モンスターを倒せなかった原因をソルトさんが解決してくれたおかげで、今や戦士部長さんの左腕として活躍している。
「フィオーネ、騎士の血を持たない貴女だけれど、あともう少しお勉強ができればもっと上に行けると思うのよ」
ララ様は私にそう言うとたくさんの本を読むようにとおっしゃった。
「は、はいぃ」
「あの鑑定士のお店や農場を手伝うのもいいけれど、貴女はまだまだ戦士として戦える。それに、戦士の天職を持って生まれた花街のサキュバスたちの希望になれる」
今、私は悩んでいる。
私を苦しみの淵から救ってくれたソルトさんに恩返しをいっぱいしたい。
でも、私は戦士としてもっともっと活躍したい。
「じゃあ、来週のテストまでにしっかりお勉強してくるのよ」
「えっ、誰か教えてくれないんですか?」
「教えられる人がいると思ったの? ここは戦士部よ」
ララ様はニコリと微笑んだが私の顔はきっとこわばっている。なぜなら私は勉強が大の苦手だからだ。
***
戦士部からたくさんの本を抱えて私はくろねこ亭へと向かった。くろねこ亭はランチの時間が終わったのか客足はほとんどなく、子供達が店の周りを掃除したり、いもいも焼きの余りを頬張ったりしている。
「おっ、フィオーネその本は?」
今日の店番はソルトさんだ。
私を救ってくれた英雄。冒険者に戻るって話が出ているらしい。冷めてるし、女の子に興味ありませんって顔してるけど……誰よりも優しくて素敵な男性だと私は思う。
魔物の血が入っている私の話を聞いても、彼だけは色眼鏡で私を見ることはなかった。それどころか、私の中にある魔物の血を個性として強さとして認めてくれた唯一の人だ。
「ララ様にお勉強しろって言われまして……」
私をみてソルトさんは「わっはっはっ」と笑った。やっぱり私は戦士の中でも飛び抜けてバカだから……かな?
「勉強ならそうだな、子供達よりもクシナダとミーナさんに教わるのがいいと思うぞ。あいつら教えるのうまいし」
ソルトさんは私の頭をぽんと撫でるとキッチンの奥へと入って行ってしまった。
——やっぱり、ソルトさんは私のこと考えてくれる
「頑張ります!!」
「なんだよ〜、フィオーネ姉ちゃん大声だしてさ〜」
子供達に文句を言われながらも私は本を抱えたままミーナさんが立てた研究施設へと向かった。農場の奥の荒地だった場所が今では多くの薬師や花街のサキュバスの中でも鑑定士や薬師の資格を持っている見習いの子供達が出入りしている大きな洋館がたつ立派な研究施設になっている。
私はこの場所にほとんど出入りしないが、クシナダはギルドにいない間は大体ここにいる。
子供達に勉強を教えているのだ。
「クシナダー?」
「フィオーネお姉ちゃん、クシナダちゃんはいないよ」
「サクラちゃん、クシナダどこにいるか知ってる?」
「ごはんたべるってダンジョンに行ったの、多分あと少ししたら戻るよ。本をたくさん持ってどうしたの?」
サクラちゃんは薬師と鑑定士の天職を持っている天才ガールだ。
サクラちゃんでもいっか。
「サクラちゃん、お姉ちゃんと一緒にお勉強してくれない?」
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