第253話 シャーリャの気持ち(1)
俺は受付課に呼び出しを受けてギルドの入り口、受付で順番待ちをしている。まぁ、正直ここに並ぶのは久々だ。いつもは端っこの採集専用窓口か、そもそもギルドから直接いくかだった。
ここにきたのは……、そうか。ほんと久々だな。
「お次のお方〜、あっ」
シャーリャは人気ナンバーワン受付嬢。エルフの綺麗な女の子だ。ギルド長アロイの妻でこちら案内部受付課の長フーリンに可愛がられる優秀なシャーリャは俺たちが無茶な依頼をしても必ず答えてくれ良い人材である。
「ソルトさん、お待ちしておりました」
「なんだよ、改まって」
「改まりますよ。だって、冒険者復帰おめでとうございます」
シャーリャは満面の笑みで言った。俺が冒険者に戻ることがどうして嬉しいんだろう? 正直彼女にはあまり関係ないような気もするけど……。
「冒険者カードを返したのってシューだったっけ?」
「そうだにゃ、ソルトとフィオーネが揉めている間にシューがゾーイに返したにゃ」
あー、クソ懐かしいな。悪役受付嬢だったゾーイ。俺のブラックリスト入りをなぜか反対して権利主張していたフィオーネ……。今やこいつら全員俺と一緒に住んでるし。めっちゃ心強い仲間だし。
ほんと色々あったよなぁ。
「実はね、私とフーリンさんは破棄せずにずっと大事に保管してたんです!」
シャーリャはドヤ顔で続ける。
「冒険者カードって、天職を持つ人が冒険者試験に合格して、ギルドの各部門の試験に合格して研修を終えてやっと渡される……冒険者にとって宝物でしょう? ソルトさんは、まだ悪かった頃のゾーイさんのせいでそれを不当に失った。絶対にあってはならないことです。当時のソルトさんはいいよって言ったけど私が良くなかったんです」
シャーリャはそう言いながらポケットに手を入れる。
右、左、左の胸の裏ポケット、お尻のポケット。
次第に彼女の顔が青ざめていく。ポケットにないのを確認すると彼女はカウンターの裏を探し回り、床を這いずり回り……
真っ青な顔で言った。
「ない——」
「どうしよう! 冒険者カードがないっ!」
シャーリャは慌ててカウンターを飛び越えると俺の肩をぶんぶんと揺さぶった。シューが唸りながらカウンターに飛び乗って避難する。
「どうしよう! 私ったら!」
「いや、大丈夫なんで新しいの発行してくれればいいよ」
「ダメ! だってあれはソルトさんの努力とたくさんの思い出詰まったS級カードだもん!」
あ、これめんどくさくなるやつだ。
「あの、ソルトさん。お待ちいただけますか?」
いや、その……新しいのでいいんだけどなぁ。と思いながらも慌てるシャーリャを見ていると強くいう気にも慣れないし、まぁ暇だし……。
「えっと、私、冒険者カードをポッケにしまって——違う。お手洗いに言った時に出した? あれっ、お手洗いに行ったのは昨日?!」
「シャーリャ」
「は、はいっ! 怒ってますよね。ごめんなさい。私辞表を……」
「いやいや、そうじゃなくて。手伝おうか? 探すの」
「へっ?!」
「ほら、休憩時間だし。それに2人の方が客観的に思い出せそうだろ?」
シャーリャは涙目のままお礼をいうと最後に俺の冒険者カードを見たところから話し出した。
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