第249話 獅子のダンジョン(1)
「いつも通りのメンツだな」
ワックワクのヒメのそばには絶対に行くと譲らないソラがいて、エスターはシューを抱っこして嗅覚をバカにする魔法をかけてもらっていた。
エスターはこのレオガルドの糞の匂いがどうも嫌いらしい。確かにネコ科のモンスターは糞の主張が激しい。鑑定士殺しなんて言われるくらいだ。
「ソルト、そのマスクはなんじゃ」
と俺に質問してきたヒメもシノビ特性のマスクを着用していて声がこもっている。
「あぁ、魔法道具さ。これでレオガルドの糞の匂いを軽減してる」
鑑定士はエスターのように完全に嗅覚を奪ってしまうとお仕事ができなくなる。ダンジョンの中での様々な罠を回避するために鑑定士の嗅覚は絶対に必要だし。
「ソルト、私は後方支援だけど頼りにしてね」
クシナダが俺に微笑んだ。かわいい幼女だったのがかなり頼り甲斐がある子になったもんだ。ヴァネッサと一緒に仕事をしていることもあってサイコな一面も出てきたが……。
「完了にゃ」
シューがエスターの腕の中から降りると、俺の肩に飛び乗った。
「では、お気をつけて」
シャーリャに送り出されて俺たちはポートに入った。
***
例のダンジョンの入り口につくと洞窟の中から漂う強烈な香りにエスター以外の全員が不快感で顔を歪める。
「強烈だな……」
「大丈夫、罠の気配はないわ」
クシナダの合図の後、俺たちは洞窟に足を踏み入れる。タケルたちが倒したのか通常種のレオガルドやレオガルドが捕食する草食モンスターの死骸が転がっていた。
「ちょっと待ってくれ」
「にゃにゃ」
俺はツノの生えた大きな猪の死骸に近づくとツノを折った。
「それは?」
「これはレオガルドによく効く毒薬さ」
死んだ猪は
まぁ、この猪はレオガルドの餌ではあるが反撃がうまく行くとレオガルドが死ぬこともある。
「このツノがレオガルドを倒す鍵になるってのはあのバカは知らんだろうな」
「エスター、シュー」
エスターは俺の言う通り剣を抜いた。
「シュー、このツノに溜まった力をエスターの剣にうつしてくれ」
「にゃにゃっ」
「雑魚のレオガルドたちはこれで大体倒せるだろうな」
「任せておけ」
エスターはニヤリと微笑むと小さく頷いた。心強いな。そんな風に思っていた時のことだった。ふわりと俺の鼻腔に入ったのは人間の香り。人間の血の香りだった。
俺はエスターを押しのけて血の香りの方へと足を進める。
「あった」
ボタリと溜まっていたのは人間の血だまりだった。
まだ新しい、ここは中階層。タケルたちは近くに……いる?
「シュー、タケルたちの気配は」
「この階層にはないにゃ」
「あのバカ、この傷負って進んだってのか?」
「あのバカならやるにゃ。はいすいのじん! とかよく言ってたにゃ」
そうだ……。確か追い込まれれば追い込まれるだけ強くなるとかいうスキルがあるとか言ってたっけ……。タケルが動いているせいで第2部隊が発見できずにいたとか?
あいつはどんだけバカなんだよ……。
「ソルト、下がってろ」
エスターが俺の前に出ると、がるるると周囲から唸る声が響いた。
「10……いや20はいるな」
中型のレオガルドたちが一斉に俺たちに飛びかかる。俺も剣を抜き、火の魔術や剣術で奴らの攻撃をかわす。
エスターは一匹ずつ確実に処理していく。華麗で素早く確実な一撃がレオガルドたちに降り注ぐ。
エスターが10匹も倒すころにはレオガルドたちが散り散りになって逃げていった。
「なんだ……この音」
レオガルドたちを蹴散らしていて気がつかなかったが、ダンジョンの最深層から響くドーン、ドーンという大きな音。
この先にレオガルド・ロゼがいるの……か?
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