第217話 新女帝の誕生(2)
「神刀?」
陽女帝は「竜宮城の国宝です」と言ってから家臣に言いつけて他になくなったものがないか調査するように命令した。
「我が祖父が愛用した剣です。幻獣のツノから削り出された……貴重なものです。妲己の爆発騒ぎに乗じて盗み出されたのでしょうか」
俺とミーナは顔を見合わせた。
「おそらく、妲己に手を貸したエンドランドの闇商人の仕業かと」
ミーナの答えに陽女帝は
「もしも、見つかることがあればこの竜宮城にお持ちいただけませんか?」
と言った。俺はもちろんですと返答し
「私たちも新女帝の即位を見届けましょうか」
ミーナは万能薬とその生薬のタネを大事に抱えると微笑んだ。
***
まだ復興途中の竜宮城の中庭に多くの兵と、極東とエンドランドからの助っ人たちが集まった。
あの妲己の爆発騒ぎで多くの人間が死んだ。その悲しみも黒雲が晴れたことで少しずつ前を向けるようになってきたのだ。
「では、皆さん。龍神最後の生き残り
女帝の称号を失った陽は幼い頃の名・
「では、
「我が父……龍神の長は言ったアル。人間と共に生きる。でも、人間は龍神を殺したアル」
そして、俯き……涙を流すものもいた。
「でも、
「長年できなかった……龍神と人間が手をとって歩む。そんな国を
俺は
——人間を守ることがリュウカに住まう龍神の役目
自分の家族が殺されても、恨みに走らずに相手を見極める
と同時に薄汚い人間の心を恥じた。
「さて、ソルトさん。流通部の方の仕事が山積みですよ」
ミーナは様々な生薬をもらって満足したのか俺に大きな荷物を投げてよこした。シューは炊き出しからサカナをせしめて戻ってきていた。
「復興したら翡翠とお魚巡りにゃっ!」
「ねぇ、ソルトさん。エスターのことだけど……」
「あぁ、聞いてる。対策を練らないといけないな……流通部でもなにかできるだろう」
「ええ、問題はララ戦士部長ね」
そうだ。忘れてた。
リュウカにくる前、俺を訪ねてきたデュボワ氏から俺は衝撃の事実を耳にしたのだ。ここでの一件が片付くまで保留にしてたが、また厄介なことになる。
そんな気がしていた。
——ララとエスターは……血を分けた姉妹なんだ
「ミーナさん、頑張ったししばらくお休みもらってもいいか?」
「ダメですよ」
「ちょっとだけ」
「ダメです」
「へいへい」
俺は新しい女帝と元女帝に手を振って、リュウカ帝国をあとにした。
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