第98話 花街のサキュバスたち(1)
魔物愛護団体とかいう胡散臭い団体へは上流階級やらギルドに反対する医師やらが介入しているようだったが……冒険者よりも一般市民の方が多いんだ。そういう考えが大きくなるってものおかしくはない話だし。
「まさか国が魔物愛護団体に対して慎重な姿勢をみせるなんて。あの戦士様大好きな国王様がね。王族の気まぐれに私たちは振り回される羽目になるなんて」
ミーナはため息をついた。
俺たちがヒミコまで呼んで潜入したというのにギルドは魔物愛護団体への介入をやめたのだ。俺としては問題が起こらなければどうでもいいけど。
ただ……
「のぉのぉ、ソルト。ヒメはお餅が食べたいんじゃ」
「すみません、本当にすみません」
ヒミコはこの狐姉妹を置いて行きやがった。
なんでもあっちの王位継承は【アマテラス】さんという王女さんで決定したからヒメたちもある程度自由になったらしい。
「そうじゃ、ワカヒメ殿がの。ソルトを婿にしたいと言っておってのぉ。どうじゃ? ん? ワカヒメ殿はいいものをもっておるぞ」
ヒメはイヤラシイ笑顔で胸のあたりで大きな2つの丸を撫でるように手を動かした。まるで姫様とは思えないゲスさである。
「まぁ、ないよりはあったほうがいいよな」
俺はわざとヒメの方を見ながらいう。
お返しだ。まるで俺が巨乳好きみたいにいいやがって。
次第にヒメは真っ赤になり怒り出す。慌ててソラが止める。呆れ顔のミーナとシューはじっとりした目で俺を見つめていた。
「まぁ、ここでの生活を捨てて極東に行くのはちょっとな。それに俺は血筋がいいわけでもないし」
ってか、ワカヒメさんは王族だろ?
ちゃんと極東のいいお家柄と結婚しておくべきなんじゃねぇの? ワカヒメさんが産んだ子だってかなり下の方になるが王位継承権があるはずだし。
「ご本人の強いご希望じゃ。お主は命を救ってくれた恩人じゃからの」
洗脳を解いただけなんすけどね……。
極東との友好に使えるし、まぁ答えは出さずに放っておくか。
「で、なんでお前らが滞在すんの?」
ヒメとソラはヒミコに頼んで俺の家のセキュリティーをぐーんとあげて滞在をしている。困ったことに空いてる部屋に転がり込んでしばらくは住むらしい。
「王位継承選挙も終わったしのぉ。ヒメはヒメの居たいところに行くことにしたのじゃ。ヒメたちはヒミコ様と同じように長生き。王になることはハナっから難しかった。じゃから、今後はヒミコ様のように知識に富んだ存在になるのじゃ」
胸は富んでないけどな。と言いかけてやめる。
ミーナの鉄拳が飛んできそうだったし。
「ま、いいんじゃねぇの。トラブルは起こすなよ」
回復術師とシノビ。相当な戦力だし、この狐姉妹は色々と役に立つし。俺たちの前にツクヨミが立ちはだかっている以上、極東の人間がそばにいて損はないだろう。
ああ、今日も平和に行けばいいな……。
その時だった。
「ミーナ、仕事中悪いな。ソルトと一緒にきてくれ……ないか?」
勢いよくドアを開けたネル・アマツカゼはヒメたちの姿を見て驚いているようだった。そりゃそうだ。極東の王族が呑気に茶をしばいているんだから。
「どうしたの、そんなに慌てて」
ネルと仲の良いミーナは落ち着いた声で言った。だが、シューがただならぬ気配を察知してミーナの膝から降り、俺の膝に乗った。
「例のやつらが動き出したかもしれない。ここのところ、冒険者の変死が続いていてな。喉の奥にびっちりとキノコが生えた不可思議な死体だ。研究部の話じゃゲンワクキノコの一種で人間に寄生する新種だそうだ」
普通、幻惑キノコは人間に寄生しない。
ドラッグスムージーの時のように胞子を摂取すると依存だけがのこって脳が破壊されるが……。新種か。
「死体からは胞子がでないことがわかっているが……念のため防護魔法をかけてから入ることになる。協力をお願いできないだろうか」
ネルのお願いを断る理由はない。
「わかってることを教えてもらえますか」
+++++++++++++++++++++++++++++++++
あとがき
お読みいただきありがとうございます。
今回のお話「花街のサキュバスたち」は以前、読者様よりいただいた応援コメントでとても面白いなと感じた題材を一部使わせてもらっています。
読者の皆様、いつも本当にたくさんの応援ありがとうございます。
作者のモチベーションに繋がりますので応援、コメント、レビュー、ブクマお待ちしております。
続きも是非お楽しみくださいませ。
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