第51話 こんなところ

 世界が切り替わる。

 おしまいは海辺。

 二人、座って海を見ている。

 そうか――

「やっぱりお前、俺が好きだったんだな」

「はぁー?」

「いや世界が認めちゃったんだからバレバレだぞ」

「いやでも恋とか愛とかではないですよ、たぶん」

「たぶん?」

「近いです離れてください」

「顔赤いぞ」

「馬鹿! ひどい!」

「何がひどいんだ」

「隠してたのに!」

「参考までにどういうとこが好きなのか訊いてもいいか?」

「なんで急にぐいぐい来るんですか、キャラ崩壊ですよ!」

「いやキャラ崩壊はしてない、好かれてるのはわかってるけどなんで俺なんかを好きになるのか趣味悪いなって思ってるし」

「そういうとこですよ!」

「……む」

「自信がなくて馬鹿なとことか」

「disってる?」

「素直なとことか」

「む」

「目が悪いとことか」

「む、」

「あと馬鹿なとこ、すぐ騙されるしどこまでも馬鹿」

「いや失礼だな!?」

「それは君もでしょぉ」

「……ふ」

「笑わないでくださいよぉ」

「すまん、でも、違いないと思ってな、ふふ……」

「はー、ほんと馬鹿ですね……君も、僕も……馬鹿。でも……」

 一拍置いて、

「悪かぁないですね」

 そうしてきつねはふにゃりと笑う。

 夕陽が海を照らしている。

 陽が動き出したのだ。

 肩に軽い重量がかかる。

 きつねの髪をすい、とすくい、放す。

 そうして夜が明け、朝が始まる。



『たぬきかきつねのロンサムサバイブ』


     ~おわり~


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

たぬきかきつねのロンサムサバイブ Wkumo @Wkumo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ