第40話 よべどこぬむら

 ぱ、と景色が切り替わる。

「ゲームとかに出てくる、旅立ちから二番目くらいの村」、例の村だ。

 霧が立ち込め、霧が立ち込め、ひと気も獣気もない。

 前に来たときとは違い、俺一人。きつねはいない。きつねの「最後の未練」であるところの先代柱も、なぜかいない。

 俺一人で回想をさせようという魂胆なのか、その辺りはよくわからない。

 初めてこの村に来たとき、村をダサいときつねが言ってたしなめたんだっけ。懐かしいな。

 常に楽しいことを探している、と言ったきつね。

 あれはどういうことだったのか。一匹の孤独を紛らわすために刺激が必要だったということか?

 きつねのいないところできつねについて色々考えてしまうのはきつねに失礼な気もするが、なんてったって状況が状況だ。そんなことも言っていられない。少しでも手がかりを探さなければ。

 目が悪いとdisられたり、見張り台に上って姿勢が悪いのを正されたりしたっけ。

 きつねは目がいい。姿勢はそんなによくない。そこまで思い出して、ふと思う。どうしてここにあいつがいないんだろう。

 あいつがいない旅をなぞるのはある種……何と言っていいのか、よくわからないが、本当によくわからない。

 まあいい。寂しがっている場合ではない。先に進まねば。

 機械が化けた子供に騙されて、きつねを放って先に行ってしまって、すまんって言ったな。

 きつね、あれ許してくれたんだろうか。

「一介のたぬきごときがきつねをどうこうできるはずがない」、そう言われたけど、どうこうしなきゃいけないんだよ、俺は。そうしなければ……

 本当に大切にしたいものは、信じたいものは何なのか、考える必要がある。

 また景色が切り替わる。

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