第38話 ゆえにひとり

「何だ、これ……」

「そういうことですよ」

 と、きつね。

「どういうことだ……」

 と、俺。

「あなたが主になる時が来たってことですよ」

「何……?」

「今、ここで。承認してくれればいい。そうすれば、代替わりは為されます」

「どういうことだ、説明してくれ」

「説明、要ります?」

「要る。何かわからないものを承認できるわけないだろ」

 はあ、とため息をつくきつね。その表情はやはり、ない。

「やはり察しの悪いたぬきですね、あなたは」

「……」

「この旅は、代替わりの旅だったんですよ」

「代替わりの旅……?」

「世界の柱。それになる獣。今の柱が絶望したとき、世界は無になり繰り返す……新たな世界の柱に代替わりするための、旅」

「……」

「この機械たちは世界の尖兵です。世界のために動き、働き、代替わりを支える兵士」

「……」

「失望しましたか、したでしょう。結局僕は君を騙していたわけですからね。ですがあなたに選択権はありません。今ここであなたは代替わりを承認する」

「承認したら……どうなるんだ」

「世界が新しくなりますよ」

「そしたら、お前はどうなる」

「消えますよ、当たり前でしょう」

「それなら、承認はできない」

「ハッ」

 鼻で笑うきつね。

「選択権はない、って言ったでしょう。あなたが承認しなくても、機械たちが強制執行してくれますからいかようにもなる。さあ、」

 じり、と機械たちが輪を狭める。

 後ずさろうにも、囲まれているのでどこにも向かえない。

「……」

 どうすればいい。どうすれば?

 じり。

 狭まる。狭まる。

「……ッ」

 俺は、拳を構えた。

 そのとき、ぱ、と。

「……?」

 景色が、変わった。

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