第37話 いつまでたっても

 かつん、かつん、と音が鳴る。

 白いドームの下、足を踏み出す度に床が鳴る。大理石、とやらだろうか。詳しくないので知らないが、きつねはそこそこヒールの高い靴を履いているので余計に音が鳴る。

「なんか……」

「……」

「宮殿みたいだな?」

「ふ」

「?」

「そうかもしれませんね」

「……」

 実際に来たことはないが、ゲームとかに出てくる宮殿とかってこんな感じのイメージだ。最近のグラフィックやらがしっかりしたゲームとかだとこんな風に、踏み出す度にかつんかつんと音が鳴ったりもするし。

 ……俺の世界認識、ゲームの比率高すぎじゃないか⁉

「今頃気付いたんですか」

「今頃気付いたよ!」

「たぬきくんは本当にゲームが好きですねぇ」

「逃避のためだけにやってたと思ってたけど……」

「世界認識が依拠するほどやってたってことですねぇ。小さい頃からやってたんですか?」

「やってたけど、親が厳しかったから1日30分だった」

「へえ、それはまた」

「隠れてやってひどく怒られて、隠されたりした」

「ああ、よく聞く話ですねぇ」

「そうだろ」

 ヒト社会に入って、一獣暮らしをするようになってから結構ゲームを買って徹夜でやったりしたっけ。

「それでいつもそんなクマができてるんですねぇ」

「それは関係ないって」

「関係ないんですかぁ?」

「ない、たぶん……」

 たぶんない!

「……」

 かつん、かつん、かつん。

 いつの間にか、俺たちはそれこそ大きな宮殿のようなものの入口まで来ていた。

「おお、すごい……けど、これ、」

 ポータルがいつも置いてある遺跡と……似てないか?

 いや、それだけじゃない。この街全体の雰囲気は……なんとなく、あの遺跡と似ているんだ。

「入りましょうか」

「……そうだな」

 かつん、かつん。

 宮殿の中も、床は同じ。色が違う石材でモザイク様になってはいるものの、立てる音は同じだった。

 長い長い廊下を歩く。そういえばこれもあの遺跡と似ている。

 廊下の壁、宮殿ならば絵画とかが飾ってあるのが定石だ。ここにも飾ってありはするのだが、その絵は全てぼやけてしまっており、何の人物が描いてあるのか判別することができなかった。

「変なところだな……」

「ふふ」

 何か……違和感。俺はきつねの方を見る。表情がない。

 どうしたのだろうか。具合でも悪いのか?

 どうした、と訊こうとして、

「着きましたよ」

 目の前には玉座の間らしき場所。

 きつねはつかつかとその中央まで歩いていき、そして、右手をす、と上げた。

 慌てて追い付く。

 チキチキ、という音。そこからも、ここからも。

 中空から現れた大量の「あの機械」が、俺たちを見ていた。

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