第36話 やっととうちゃく

 目が覚める。

 じっと俺を見ているきつねと目が合った。

「うおっ何だ」

「お寝坊さんですねぇ、もう昼ですよ」

「昼!?」

 空を見ようとして、ここが水中だということと、空にもう随分と変わりがないことを思い出す。

「そうだったな……」

「何がですか?」

「今が非日常だってことだよ」

「……ふ」

 笑うきつね。

「……行きましょ。ポータルはすぐそこですよ」

「ああ」

 中空からポータルが現れる。隠れていたのか。

 きつねはそれに手を伸ばし、俺も。

 手が、触れた。





『―—終わりだね』

 世界は終わる。

『―—終わらない』

 世界は続く。

 終わる、終わらない、どちらが真実の未来なのか、

 わからないまま彼等はここまで来たのだろうか。

 それだって、わからないのだ。





「……」

 白い。

 第一の感想はそれだった。

 見渡す限り、白い空、白い床、白いドームに覆われ、白い建物が立ち並ぶ街。

「白いな……」

「そうですね」

「広いな……」

「そうですねぇ」

 今度こそ、誰か住んでいるのだろうか。そして、今度こそ、無に侵食されない安全な場所に辿り着けたのだろうか。

 一歩踏み出したのは、きつねが先だった。

「あっ、おい、先に行くなよ」

「たまには僕が先でも罰は当たらないでしょう」

「いやそもそも俺が先に行かなきゃいけないなんて法はないって最初から」

「まあ、それでもこれは君の旅ですからね」

「それがよくわからないんだよな」

「わかっててもわからなくてもいいんですよ、辿り着きさえすればいいんですから」

「そんなものか」

「そんなものです」

 白の街。

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