第36話 やっととうちゃく
目が覚める。
じっと俺を見ているきつねと目が合った。
「うおっ何だ」
「お寝坊さんですねぇ、もう昼ですよ」
「昼!?」
空を見ようとして、ここが水中だということと、空にもう随分と変わりがないことを思い出す。
「そうだったな……」
「何がですか?」
「今が非日常だってことだよ」
「……ふ」
笑うきつね。
「……行きましょ。ポータルはすぐそこですよ」
「ああ」
中空からポータルが現れる。隠れていたのか。
きつねはそれに手を伸ばし、俺も。
手が、触れた。
◆
『―—終わりだね』
世界は終わる。
『―—終わらない』
世界は続く。
終わる、終わらない、どちらが真実の未来なのか、
わからないまま彼等はここまで来たのだろうか。
それだって、わからないのだ。
◆
「……」
白い。
第一の感想はそれだった。
見渡す限り、白い空、白い床、白いドームに覆われ、白い建物が立ち並ぶ街。
「白いな……」
「そうですね」
「広いな……」
「そうですねぇ」
今度こそ、誰か住んでいるのだろうか。そして、今度こそ、無に侵食されない安全な場所に辿り着けたのだろうか。
一歩踏み出したのは、きつねが先だった。
「あっ、おい、先に行くなよ」
「たまには僕が先でも罰は当たらないでしょう」
「いやそもそも俺が先に行かなきゃいけないなんて法はないって最初から」
「まあ、それでもこれは君の旅ですからね」
「それがよくわからないんだよな」
「わかっててもわからなくてもいいんですよ、辿り着きさえすればいいんですから」
「そんなものか」
「そんなものです」
白の街。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます