第11話 さとにかえるの
電車に乗っている間中、どういう顔をして里に帰ればいいのかを考えていた。
そもそもどこに住めばいい?
両親のいるあの家に帰るのか? 両親はまだ生きているのか? 里を出てから一切連絡を取っていないからわからない。
教師にはどんな顔をすればいい? 隣人には? 知り合いには?
『やっぱり戻ってきたか。君はどうやったってできないたぬきなんだな』
『無様だね。たぬきの面汚し』
『死んだものだと思っていたけど』
『どうして帰ってきたの?』
『軽蔑したわ』
そんな言葉がぐるぐる、ぐるぐる。
昔は皆のことが好きだった。優しくしてもらいたくて、受け入れてもらいたくて、でもいくら頑張っても受け入れてもらえないから、空回りするばかりだから、片想いはつらいから、嫌いになった。
俺を受け入れてくれない相手なんて好きでいても仕方がない。俺を嫌う相手に対して努力したって仕方がない。
でも立派なたぬきになれば受け入れられてもらえるかもとか、好きになってもらえるかもとか、そういう気持ちは確かにあって、嫌いだけどどうやっても捨てられない、そんな風に思っていたところは確かにあって。
どのみち帰る場所はあそこしかない。
どうやってもはまらない壊れたパズルのピースのような自分を受け入れてくれる場所なんてこの世のどこにもないのかもしれないとかそんな考えを否定してここまで来たけど、孤独を埋めてくれるものなどどこにもなかった。
故に、帰っても孤独、帰らなくても孤独。
もういっそ飛び込んでしまおうかと思った。だけどそうしたって動物事故として片付けられるだけ。俺の残したものは燃えるゴミにでも出されるだけだろう。
それならば里でそうなった方が、まだ弔ってもらえる。
できそこないのたぬきでも、ゴミ箱行きなんてことはないだろう。両親にとっては仮にも自分たちの息子だし、里にとってもまだ里の仲間、いらないたぬきでも、慣習上は弔わなければいけないはずだ。
そうだ、そうしよう。
それなら。
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……それなら?
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