召喚士VS黒い幻想英雄3

「どうしてブルーノをかばったかって……? そんなの……俺の二番目にできた友達だからに決まってるだろ……。性格が最悪だけど」


「ら、ライト!? テメェ、しっかりしろ!! 死ぬんじゃねぇぞ!?」


 白煙を上げるライトは弱々しく笑った。


「まったく……死ぬなって無茶だろ。アイツの攻撃を受けて普通の人間が無事なはず――って、あれ。気が動転していたからわからなかったけど、熱いだけで意外と普通に喋れてる。というか立てるな」


「……ライトぉ!! ライ――は?」


 泣くほど心配していたブルーノを押しのけて、ライトはケロッとした顔で立ち上がった。

 ダメージ部分が炭化していると思いきや、ドラゴンローブをめくってみると肌が少し赤くなってヒリヒリしている程度だ。

 オータム・バグズの魔法の威力が落ちているというわけではない。

 キングレックスに当たったときは、たしかにダメージが出ていたのだから。


「これはもしや――」


 燃えていないドラゴンローブを意味ありげに眺めるライト。


「心配したのが、何か急に恥ずかしくなってきたぜ……。って、ライト見ろよ! 好感度が!?」


【ライトパーティー:好感度100】【オータム・バグズ:好感度90→50】


「後ろにいた俺たちを誤射したことによって、オータム・バグズの好感度が下がったのか!」


 前線では未だにリューナとキングレックス、オータム・バグズが戦い続けていたが、明らかに戦況が変化していた。

 好感度システムの力が弱まったオータム・バグズが押され始めているのだ。


【ライトパーティー:好感度100】【オータム・バグズ:好感度50→60】


 しかし、普通に戦っている間にも好感度は自然回復していってしまう。

 急がなければならない。


「リューナ! 好感度が下がっている今がチャンスだ! 一気に攻めろ!」


「了解!」


 好感度のことに気付いていなく、罠かと攻めあぐねていたリューナだったが、信頼するプレイヤーの声で一気呵成にたたみ掛ける。


「チッ」


 オータム・バグズは舌打ちしながら下がろうとするも、その退路を塞ぐようにキングレックスが迫り、背後から連携を仕掛けてきている。


『グルォォオオ!』


「くっ!?」


 オータム・バグズは大顎による致命傷は避けたが、振り向きざまに鞭のような尻尾攻撃を喰らい、吹き飛んで壁に激突した。

 敵の時は脅威だったが、仲間になってみるとキングレックスは心強かった。

 ブルーノが戦いの中で成長して、集中力を高めて隙を見せないようにしているのも大きいだろう。


「オレ様にダメージを喰らわせるとは……褒めてやろう。だが――」


 壁際に追いつめたオータム・バグズにトドメを刺そうとしていたが、そう簡単にはいかなかった。


「これを使うことになろうとはな……〝憤怒イーグニスの中炎・リートゥス〟!」


 それは初級ではなく、オータム・バグズが初めて見せた中級魔法である。

 大砲の弾くらいの大きさの炎が出現して、リューナの方へ放たれた。

 弾速は初級魔法より遅く、フワフワとした印象を受ける。


「そんなもの、すぐに避け――なにッ!?」


 リューナが横にステップを踏んで回避した瞬間、その炎が追尾してきたのだ。

 突然のことで動きが単調になってしまう。


「リューナ! 追撃が来るぞ! 今は攻撃を捨て、避け続けろ!」


 ライトの指示でハッと気が付いたリューナは、ギリギリのところで追加で放たれた悲憤の小炎イーグニス・プレケスを回避した。

 それと同時に追尾してくる憤怒イーグニスの中炎・リートゥスも避けなければいけない。

 攻撃と回避を中途半端に両方やろうとしていたら、今頃は全身を焼かれていただろう。


【ライトパーティー:好感度100】【オータム・バグズ:好感度60→80】


 そんな攻防をしていたら、またオータム・バグズの好感度が上限に達しそうになっていた。

 最初の状況でもやっと戦えていたくらいなのに、ついには追尾する厄介な中級魔法まで使い始めてきた。

 戦況はかなり不利である。

 しかし、攻略の糸口は見えた気がする――とライトは確信した。


「レオー、事前に伝えておいたアレをやるぞ」


「わかった。本当はやりたくなかったが、できると言ったのはオレ様だ」


 リューナの布の袋から、ピョコンと顔を出すライオンのぬいぐるみ。

 一度しかチャンスのない切り札を使うことにした。

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