召喚士VS黒い幻想英雄2

「一気に行くぞ、ブルーノ!」


「へっ、オレに指図すんな。ライト!」


 すでにブルーノは準備していたのか、一瞬にしてキングレックスを召喚していた。

 ライトには一撃でやられたキングレックスだが、アレは【プレイヤー共有スキル:奇跡の一撃クリティカルヒット】の相性が良すぎだったためである。

 普通の戦力としてなら、キングレックスはかなり上位の召喚獣としての強さを持つ。


 一方、ライトも自らの最大戦力であるリューナに目配せをした。

 以心伝心でお互いにコクリと頷く。


「「行けッ!!」」


 ライトとブルーノの指示が同時に発せられた。

 英雄と恐竜――二体の召喚獣が息を合わせ、オータム・バグズに向かって突進していく。


「ふっ、正攻法でオレ様に刃向かうか。だが、それが正解だ。相手を陥れようとすれば、必ず我が民たちが見聞きして、好感度を下げてくるであろう」


「うん、その人たちの相手は一階で苦労したよ。だからこうやって真っ正面からお前――オータム・バグズを倒す!」


「もちろん、それも叶わぬのだがな? 悲憤の小炎イーグニス・プレケス


 オータム・バグズは火の初級魔法で応戦してきた。

 やはりそれは初級というにはあまりにも威力と速度、連射力が備わっている赤い銃弾のようなものだった。

 連射されるそれを〝すばやさ999〟のリューナは躱し、キングレックスは数発喰らってしまう。

 表皮が焼けただれるも、その王竜と呼ばれる強靱さで戦闘を継続させる。

 それを離れて見ていた召喚士二人は、ゴクリと息を呑んだ。


「すげぇ威力だな……アレが人間に当たったら一瞬で戦闘不能だぜ……」


「ああ、以前酒場で見たことがある。魔力耐性がない人間なら消し炭だ」


 そうしている間にも、戦闘は続いていく。

 素早さで勝るリューナが懐に入り込み、オータム・バグズに向かって剣を振り抜く。

 カンストした〝ちから999〟という威力で、空気すら斬り割くような錯覚に陥る豪腕なのだが――


「ほう、なかなかやるな。その太刀筋はオレ様の旧友、冬の狐王ウィンターを思い出す程度には鋭い。素早さは春の兎王スプリングといったところか。だが、この秋の獅子王オータムには――」


「くっ!?」


 オータム・バグズは王笏で余裕を持って、剣を軽々といなしていった。

 その隙をキングレックスが大顎で噛み付こうとするのだが、オータム・バグズは上手く距離を取って紙一重で躱していく。


「魔法に長け、近接戦闘もこなし、隙も全くない。……間違いなく強い」


 リューナがそう口惜しそうにするのも無理はない。

 今まで戦ってきた中でも圧倒的に強敵だ。


「お、おいおい。ライト、お前のところの召喚獣は随分と弱気だな……まだこっちの好感度が低いだけで――」


「いや、ブルーノ。よく見てみるんだ。すでに好感度は……」


【ライトパーティー:好感度80→100】【オータム・バグズ:好感度90】


「げっ!? いつの間に!?」


 お互いの好感度が最高値に達していた。

 これはつまり、ここがシステムでどうにかできる終着地点ということだ。


「お互いが正々堂々、真っ正面から戦っている。コロシアムでもあったけど、観客はそれだけでも決闘者に敬意を持ち、興奮して、好感度が上がっていくものなのだと思う」


「そ、それじゃあ、どうすれば――」


 慌てふためくブルーノ。

 その瞬間、周囲を警戒するのを忘れてしまっていた。


「危ない、ブルーノ!」


「えっ?」


 キングレックスがギリギリで回避していた悲憤の小炎イーグニス・プレケスが一発、流れ弾として飛んできたのだ。

 気が付いた時にはもう遅い。

 ブルーノに直撃のコースだ。


「ぐぅぅッ!?」


「ど、どうして!?」


 ライトは炎に包まれていた。

 とっさにブルーノをかばったためである。

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