召喚士、炎の城へ突入する
「ちょ、ちょっと待て……レオー……。今の言い方だと、この大きな城自体が魔法だと聞こえ――」
「その通りだ、ライト姫。システムで強化されたもう一人のオレ様――オータム・バグズは城を作り出すことくらい容易い。ついでに、あそこを見るのだ」
あまりの風景の変化で気が付いていなかったが、開け放たれている城門の前には首無しの兵士が立っていた。
外見的には鎧を着込んでいるので、リビングアーマーの類にも見える。
「アレも
「喚び出した……まさか召喚魔法を!?」
「なんたってオレ様は魔法使いだからな。召喚魔法もある程度は使える」
この世界では複数の系統を使える人間というのは数少ない。
使えたとしても、その魔法の系統分だけ器用貧乏になっていくのが普通だ。
それに対して、オータムは少なくとも攻撃魔法、移動魔法、築城魔法、召喚魔法、人格分離の魔法と非常に高レベルなものを複数使っている。
大賢者と呼ばれる伝説の存在に匹敵するだろう。
魔法の知識があったライトは相手の強大さを感じ取って、体温が下がり、ノドが乾くような感覚を受けていた。
「というわけで、気を付けろよ。あの首無しの兵士もシステムによる強化を受けている。見つからないように――」
「うりゃー!!」
男三人は信じられないモノを目にしていた。
すでにリューナが突っ走っていて、首無しの兵士に斬りかかっていたのだ。
意表を突かれたのは首無しの兵士も同じらしく、良い感じの一撃が入って、地面に倒れてピクピクしていた。
「殺りましたよプレイヤー! 首が無いので首級は挙げられませんが、私ってば大活躍です! って、あれ……? どうしましたか? 皆さん?」
リューナは勝利のVサインをしつつ、満面の笑みで聞いてきた。
ライトたちは、そのリューナの背後から迫ってくる大量の影に顔を引きつらせる。
「……見つかったら、連動して襲ってくるから注意しろ。とオレ様が言う前に」
迫ってくる影は数十体の首無し兵士。
大ピンチである。
しかも、リューナが一撃で倒したかに見えていた首無しの兵士も起き上がろうとしてきていた。
「囲まれる前に城の中に逃げ込むぞ。入って左の方に、戦闘禁止区域になっているセーフルームがある」
そのレオーの声に返答する暇すらなかったので、即行動した。
全員でダッシュをして、城門前で起き上がろうとしていた首無しの兵士を踏み付けながら、城の中へすべり込む。
「うぅ……申し訳ありません、プレイヤー」
「いつもは自分からはいかないのに、なんでこのタイミングで……?」
「何かよくわからない難しい魔法の話が続いていたので、つい行動してみたく」
「三歳児みたいな理由だな、ハハハ! あ、止めてオレ様の綿を抜こうとするな」
修羅場慣れしているライト、リューナ、レオーは割と余裕があるやり取りをしていた。
しかし、背後から大量に追ってくる首無しの兵士に気圧されるブルーノは青ざめた顔をしていた。
「て、テメェら!? よくこんな状況で楽しそうに話せるな!?」
「大丈夫だよブルーノ。案外、死ななきゃ死なないから」
「ライトが何を言っているのかさっぱりわからねぇ……!」
そのまま全力走をして、レオーが指示するセーフルームらしき扉になだれ込むように逃げ込んだ。
背後から追ってきていた首無しの兵士たちは、ピタッと動きを止めたあと、ライトたちを見失ったように持ち場へと戻っていった。
「ふぅ、今回は捕まるまで二秒も余裕があった」
「い、生きた心地がしなかったぜ……」
ゼェハァと息をしながら、仰向けに倒れるブルーノだった。
そこでライトは疑問を口にする。
「オータム・バグズだけじゃなく、あの首無しの兵士もシステムとやらで強化されているのか……どう攻略すれば」
「簡単なことだ、ライト姫」
「え?」
「オレ様たちも、システムで強化されればいいのだ――ここはそのための場所。そう、ここが〝好感度システム〟をもたらすNPCたちがいる部屋だ!」
ライトは言われてから気が付いた。
この部屋には大勢の人間がいることに。
何かのパーティー会場なのだろうか、かなり広い面積に、立食タイプのテーブルがいくつも用意されていた。
だが、そこに立っている人間たちはどこか黒い靄でぼやけている。
それでも敵意は向けられていない。
「今からオレ様たちは、好感度を稼いでシステムで強化されるのだ!」
「こ、好感度……?」
「なにせ、オレ様は乙女ゲーのキャラだからな! ハハハ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます