召喚士、喋るライオンのぬいぐるみを拾う
蠱毒の王――もとい、リューナ命名『ギヨギヨ』を召喚獣にして一件落着と思いきや、すっかり忘れていることがあった。
「ふん、オレ様を助けた気でいるようだが、別に自分一人でもどうとでもなっていたがな」
「「喋った!?」」
ギヨギヨに追いかけ回されていた、喋るライオンのぬいぐるみである。
態度がどことなく偉そうだ。
「初めてまともな形式の召喚契約した満足感で……忘れていた……」
「よ、よもやオレ様を忘れてたのか!? 貴様!?」
ライオンのぬいぐるみは短い手脚で立ち上がり、手をブンブンと振っている。
「まぁ、良い。一見ぬいぐるみに見えるが、オレ様もそれなりの立場の人間だ。一応は礼を言っておこう」
「ご、ご丁寧にどうも……」
ライトは人間としては小柄な方だが、それでも20センチ程度のぬいぐるみと向かい合うと巨人と小人のサイズ差だ。
それでも堂々としているライオンのぬいぐるみに気圧されてしまう。
「んん? どうした、そんな顔をして? ああ、わかったぞ。若い娘二人なら仕方がない。オレ様の凜々しさに惚れてしまったか。良いぞ良いぞ、今夜は二人を相手にするのもやぶさかではない!」
「……プレイヤー、このライオンのぬいぐるみ。何を言ってるんですかね」
「暖かい陽気が続いているし、そういう奴が沢山出てくるのかもしれない」
リューナとライトは、もうこんな感じの相手はウンザリだというように眉をひそめていた。
「ああ、これは失礼した。若い娘二人を前にして、オレ様としたことが自己紹介を遅らせてしまっていた――」
「言っておくけど、俺は男だぞ。前もこんなやり取りをした気がするけど」
「オレ様の名前は……そうだな。真実の愛を知る者レオーとでも名乗っておこう。……ん? 男?」
ライオンのぬいぐるみ――レオーは、格好良く名乗りをキメようとしたのだが、ライトの性別を知るとフリーズしてしまった。
「俺はライト、れっきとした男だ。こっちのリューナは……女性、だよね?」
「女性です。ちょっと疑問形なのは止めてくれませんか。ぶっ殺しますよ、プレイヤー」
「リューナさん、ちょっと今日は怖い」
ライトは殺気に当てられて冷や汗が止まらない。
何か悪いことをしてしまったのだろうか? と色々と無自覚なところが救えない。
――そんなことをやっていると、レオーは大笑いし始めた。
「フハハハハ! おまえら、面白いな!」
「俺は割と真剣に怒られている最中なんだけど……」
「それに善なる人間だ! 良いぞ、気に入った! オレ様に協力させてやろう!」
「……協力?」
いきなり話が進んでわけがわからないため、ライトはオウム返しに聞くしかなかった。
「そうだ。オレ様はある男を捜している! その手助けをさせてやろう!」
「困ってるなら助けてやりたいところだけど、俺たちはこれから街に戻ってクエスト達成の報告を――」
「それなら丁度良い。時が来れば〝奴〟がわかりやすく現れるだろう。それまで、オレ様を保護する権利を与えようぞ」
レオーはぬいぐるみボディで、腕組みをしてふんぞり返っていた。
「つ、つまり?」
「ええい、みなまで言わぬとわからぬか! ぬいぐるみは幼女にさらわれたり、犬に咥えられたりと行動がしにくいのだ!」
「ああ、街まで行きたいということか。わかった、一緒に行こう」
ライトは快く了承したが、リューナが止めに入ってきた。
「プレイヤー、いいのですか? 何やら怪しさ全開のような……」
「情けなくギヨギヨに追いかけ回されてたし、危険はないんじゃないかな。それに偉そうだけど、素では好い奴っぽい」
「こ、根拠は?」
「ん~、何となく」
リューナは頭を抱えてしまった。
しかし、それと同時に真の英雄は運命をたぐり寄せる力があると知っている。
今回はライトを信じることにした。
――――
あとがき
ランキングで日間異世界ファンタジー46位、週間総合99にジワジワ上がっていました!
フォローや☆を付けてくださる読者様方のおかげです!
ありがとうございます!
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