幕間 ただ一人、王城で異変の原因に気が付く

 前書き

 週間総合119位に入っていました!

 読者様のおかげです。ありがとうございます!

 カクヨムはまだ投稿し始めて日が浅いのですが、ランキングに入れて嬉しい!


――――――


「な、何よこれ……」


 久しぶりに王城に戻ってきたビーチェは、その異様な状況に唖然としていた。

 魔力照明はいつもの出力では光量が足りず薄暗く、召喚士たちが召喚獣を上手く操れないでいる。

 それどころか、魔法を使うモノ全般が異常をきたしていた。


「おう、帰ってきたか。ビーチェ」


「ブルーノ。これは一体どういうことなのよ?」


 城内の廊下。

 ビーチェは兄のブルーノに問いただすが、いつも自信満々のブルーノが言葉を濁してしまう。


「それは……だな……」


「ブルーノらしくないわ。どうしたのよ?」


「タイミング的にオレがキングレックスを手に入れた少しあとから……らしい。それで城の奴らはオレのせいだって噂をしてやがる……チクショウ」


 それで態度がおかしかったのかと納得した。

 今も城内の人間から嫌な視線を感じている。


「まぁ、一ヶ月後にソフィ様と結婚しちまえば、そんな根も葉もない噂は消えるだろ! おっと、結婚したらソフィと呼び捨てにしなきゃなぁ!」


 ブルーノは無理やり自分を奮い立たせているようだ。

 大柄な身体が普段より小さく見える。


「それはそうと、ブルーノ。キングレックスの魔石は今でも持っているわよね……?」


「おう、当たり前だろう。今日だって召喚したぜ? 突然、どうしたんだよ」


「いえ、それならいいの……」


 ならば、ビーチェが受け取ったキングレックスの魔石は何だったのか?

 それを渡してきた〝とある人物〟に聞くしかないのだが立場上、表だって接触はできない。


「おっと、そろそろオレは最高司祭様と結婚式の打ち合わせがあるから、もう行くぜ」


「え、えぇ……」


「肝心のソフィ様が会ってくれないけど、結婚したらそうもいかねぇだろう。式にはたいまつ召喚士のライトも呼んでやるぜ! 悔しがる顔が目に浮かぶってもんだ! それじゃあな!」


 ビーチェとしては、ライトがすでに〝たいまつ召喚士〟というレベルではなく、宮廷召喚士以上の存在になっていると忠告を伝えることもできたが、なぜか黙っていた。

 ライトとイナホの関係を眩しいと感じてしまったからだろうか。

 そんな事とはつゆ知らず、ブルーノは大笑いしながら去って行った。




 ビーチェも部屋に戻ったのだが、しばらくして気が付いた。


「……城内の異変……ブルーノがキングレックスを手に入れたしばらくあと……。それって、ザコライトが城からいなくなったタイミングじゃ……」


 幻想英雄を二人も維持できる尋常ではない魔力を目にして、ライトへの認識が大きく変わっていた。

 あれだけの力がありながら、どうして城にいた頃は初級の召喚すら成功しなかったのか。

 現状の城の〝魔力不足〟に見える現象と照らし合わせると――


「もしかして……ザコライトの膨大な魔力が散らされて周囲に供給されていた……? いえ、それだったら今までも城から離れた人間が異変に気が付いているはず。まさか、城の人間全員に魔力のケーブルのようなモノを強引に繋いで……」


 高度すぎる、ありえない。誰がそんなことをできるのだろうか。

 そう考えを出そうとした瞬間――


「え……?」


 部屋に一枚の紙が落ちていることに気が付いた。

 そこに書かれていたのは。


『イノチ ガ オシクバ コレ イジョウ センサク スルナ』


 筆跡はわからないが、常に見ているぞという恐ろしさと殺意だけは伝わってきた。

 確認した直後に、紙は青白い炎と共に消え去った


「これからイズマイール王国はどうなってしまうのよ……」


 ビーチェは、今日ほど自分の立場を苦々しく思ったことはない。

 きっと、これを解決できるのは自由の身になったアイツだけなのだろう――と。

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