召喚士、冒険者ギルドでランクアップしすぎてしまう
ライトとリューナの二人は冒険者ギルドにやってきていた。
二階建ての大きな建物で、一階部分が受付と酒場だ。
明るい内から冒険者たちで賑わっている。
「あ、ライトさん、リューナさん! こっちでーす!」
「エイヤ、ごめん。少し遅れたかもしれない」
冒険者ギルドで合流しようと約束していたエイヤは、すでに受付のカウンターにいた。
「す、すみません……。私の服選びで手間取ってしまって……」
「リューナさん、ワンピース似合ってます。素敵です!」
「え、えっへへ……ライトに選んでもらいました」
リューナは最初にあった不遜な態度は見られず、照れている姿は年相応の少女にしか思えない。
「ライトさんも、こんな可愛い服を選んであげるとか隅に置けませんね~!」
「そ、そうか……?」
婚約者と同じ服を選んで楽をしたと言い出しにくい。
大丈夫、たぶん絶対バレることはない……と思う……ような気がする。
絶対に黙っておこう。
そう心の奥にしまっておいた。
「わたしも、今度ライトさんに服を選んでもらおうかな~……」
「え?」
エイヤがイタズラっぽい笑みを浮かべた。
「なーんて、冗談ですよ。それにもし、同じ服を選んだとなったら修羅場になりそうですし!」
「そ、そうなのか……?」
「あはは、ライトさん。何で真剣な表情になっているんですか。冗談ですってば。それよりも、聞いてください見てください! 先に私の分のクエスト報告をしたのですが、何とぉ~!」
嬉しそうなエイヤが見せてきたのは、冒険者証明書だった。
「じゃーん! たった一回のクエストでランク1からランク2に昇格しちゃいました! 普通、何ヶ月もかかるのに!」
「おぉ、すごいじゃないか! それで機嫌が良さそうだったんだな!」
「森の中でゴブリン十匹くらいを相手に――って、ほとんど見ていただけですけどね! お二人のおかげです!」
首を傾げたリューナがつついてきた。
「プレイヤー、ランクとは?」
「えーっと、冒険者ランクというのを簡単に説明すると――」
冒険者ギルドが定める冒険者ランクは、クエストの功績に応じて上がっていく。
冒険者ランク1――冒険者登録を済ませただけの一般人。主に町中の安全な依頼を推奨される。
冒険者ランク2――安全な依頼を数ヶ月、順調にこなして冒険者の常識がわかってきた者。
冒険者ランク3――モンスターとの戦闘に慣れてきた冒険者。なるまでに数年を経て、ここで挫折する者が多い。
冒険者ランク4――中堅冒険者。このランクなら、安心して依頼を任せられる。
冒険者ランク5――ソロ、パーティー共に優れた功績を残している冒険者。個人指名しての依頼も増えてくる。
この上にランク6~10まであるのだが、そこからは英雄の領域である。
もはや冒険者として登録しているだけで、功績によって得た爵位などの身分で生活している者も多い。
ごく少数の特別なエリート冒険者たちで、羨望の的である。
「――という感じだ」
「なるほど。私が女神イズマ様から持たされたカードに書かれていたランク1とは、そういう意味があったのですね」
リューナが取りだしたのは、冒険者証明書だった。
そこにはリューナのデータが記載されていた。
「えっ、イズマ様からって……偽造……じゃないよね?」
「失敬な、女神様が作ったので本物ですよ……たぶん」
二人は多少不安になったが、この冒険者証明書は高度すぎる魔法技術が詰め込まれているので、もしかしたら最初から女神由来のものかもしれないと思い込むことにした。
「ライトさんとリューナさんは、たった二人でゴブリンの巣を壊滅させたんです。わたしみたいにランク2……いえ、ランク3くらいになっているかもです!」
「ははは、そんな一気に上がるはずは――」
ライトとリューナは、受付嬢にカードを渡した。
備え付けの装置にかざすと内部記録が参照される。
すると、受付嬢の顔が見る見る青ざめて、二階に駆け上がっていった。
「……もしかして、リューナの冒険者証明書が偽造で逮捕かな?」
「竜の勇者、腹を切る所存です」
二人は似たような心境で遠い目をしていた。
そんな中、二階からドタドタと走る音が聞こえてきて、男性が階段をゴロゴロと転がり落ちてきた。
「だ、大丈夫ですか?」
ライトは、その倒れていた三十代前半らしき男性に手を差し伸べる。
手を取って立ち上がった偉そうな男性は、二人をジッと見ていた。
「お前たちが、あのゴブリンの巣を掃討したという冒険者だな……?」
「そ、そうですけど」
「ふむ……一見、ただの少年と可愛いお嬢さんにしか見えないな……。しかし、冒険者証明書に記録された討伐情報は誰にも改ざんできん……」
「なにを言って――」
「この私、ギルド長ゼイレムが功績を確認した。おめでとう、キミ達は今日から冒険者ランク6――英雄の領域だ!」
「は?」
その異例の昇格に、冒険者ギルド内はざわめいた。
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